さらに特筆すべきなのは、肝炎を引き起こす原因がわかっていないことだ。
肝炎は、通常A~E型の5種類ある肝炎ウイルスへの感染が原因となって発症することが多い。しかし、現在急増している子供の肝炎では、従来のウイルスが検出されていないのだ。
この原因不明の子供の肝炎は、海の向こうの話ではない。厚生労働省の発表によると、日本国内でも昨年10月以降、12人が原因不明の肝炎を発症しており、近く専門医などによる調査チームを立ち上げることが発表された。
今年3月に急性肝炎になった9才の男の子は、突然、何時間も嘔吐が止まらなくなり、胃液だけでなく緑色の胆汁まで吐いたという。次第に意識が朦朧とし、立ち上がることもできなくなった。
病院で血液検査を受けたところ、健康であれば0~40ほどに収まる肝臓の数値が1100を超えていた。急性肝炎と診断されたが、A~E型の肝炎ウイルスはいずれも陰性。一方で、新型コロナウイルスに感染していたことが判明した。
プール授業再開に断念
新たな肝炎の原因は何なのだろうか。理由の1つとして考えられるのが新型コロナとの関連性だ。
イギリスで原因不明の肝炎を発症した子供126名を対象に行った調査では、約20%が新型コロナウイルスに感染していた。
また、同じ調査で新型コロナウイルスよりも高い感染率だったのが、「アデノウイルス」だ。肝炎発症者の約70%から検出された。
「アデノウイルスは、発熱や咳、喉の痛みなどの風邪症状を引き起こす感染力が強いウイルスで、『プール熱』と呼ばれる咽頭結膜熱や、『流行り目』と呼ばれる流行性角結膜炎の原因となります」(国際未病ケア医学研究センター長・一石英一郎さん)
しかし、これまで肝炎を起こすアデノウイルスはほとんど報告されていなかった。子供の肝炎と因果関係があるとすれば、どのようなことが考えられるのか。一石さんは、「あくまでも推測ですが」と前置きした上で、次のように語る。
「まずあげられるのは、アデノウイルスが変異して、肝臓に直接何らかのダメージを与えたという考え方です。イギリスの保健当局も可能性について調査しています」
次に考えられるのは、新型コロナとの同時感染や既往歴が原因という説だ。
「新型コロナに感染することで、肝臓の免疫機能に何らかの変調が起きた。その結果、アデノウイルスが肝細胞に侵入しやすくなった可能性があります」(一石さん・以下同)
加えて、犬が原因という説まで出ている。イギリス保健省の調査によると、発症した子供のうち70%の家庭で犬を飼っていたという。