ライフ

増加する子供の「原因不明肝炎」 コロナ、プール、犬などとの関連を指摘する説も

(写真/PIXTA)

「子供の肝炎」6月に感染爆発か(写真/PIXTA)

「ただの風邪だろう」──その判断が子供の命を奪うかもしれない。新型コロナウイルスの第6波が収まったかのように見えるいま、子供たちが密かに新たな脅威にさらされている。欧米で増加している「原因不明の肝炎」だ。発症のメカニズムがわからないなか、命を守る方法とは──。

 ぐったりとした娘を抱えて病院に駆け込んだのは、「ウイルス性の風邪でしょう」と診断された翌日のことだった。幼い娘の両目は黄色く濁り、ピンク色だった頰は黄色く変色し始めていた。

 嘔吐と黄疸に加え、意識が朦朧とするなど、一刻を争う状態だった。集中治療室に運ばれた後、新たに告げられた病名は「急性肝炎」。さらに、「健康な肝臓を移植しなければ、命は助からない」と医師から宣告された──。

 つい2、3日前まで元気だった子供が臓器移植が必要な体になる。信じがたい話だが、今年3月、イギリスで実際に起きた出来事だ。

 いま、0~16才の子供が原因不明の肝炎を発症するケースが世界的に急増している。

 小児肝臓病を専門とする近畿大学医学部小児科の医師・田尻仁さんは次のように説明する。

「欧米を中心に子供が肝炎を発症し、重症化するケースが報告されています。症状としては、嘔吐や食欲減退に始まり、黄疸によって顔や白目が黄色くなる、尿の色が濃くなる、白色便が出るなどがある。意識が朦朧としたり、けいれんを起こすこともあります。適切な医療を受けなければ、3~4日で死に至る可能性があります」

 怖いのは、高熱が出たり、痛みを伴うことが少なく、自覚症状が軽いことだ。ただの風邪だろうと受診を遅らせ、検査の結果、肝炎と診断される頃には重症になっているケースが少なくないという。さらに治療は急を要する。

「まずは対症療法として、点滴をしたり、血液中にたまったアンモニアなどを除去するために血液浄化治療を行います」(田尻さん・以下同)

 対症療法だけでは回復しない場合、残された手段は臓器移植のみだ。

「目下、アメリカでは肝炎を発症した子供の14%が臓器移植を受けています。2~3日で症状が急激に悪化するケースでは、臓器バンクからの臓器提供を待つ時間がないため、家族など近親者から提供してもらうことになります」

 今年4月にWHOがイギリスで、原因不明の急性肝炎を発症する子供が増えていることを発表した。以来、世界中から同様の報告が相次ぎ、欧州疾病予防管理センター(ECDC)によれば、この4月以降、世界中で0~16才の子供450人以上が原因不明の肝炎を発症しており、そのうち30人近くが肝臓移植が必要と診断され、12人が命を落としているという(5月17日現在)。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
石川県の被災地で「沈金」をご体験された佳子さま(2025年4月、石川県・輪島市。撮影/JMPA)
《インナーの胸元にはフリルで”甘さ”も》佳子さま、色味を抑えたシックなパンツスーツで石川県の被災地で「沈金」をご体験 
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
隣の新入生とお話しされる場面も(時事通信フォト)
《悠仁さま入学の直前》筑波大学長が日本とブラジルの友好増進を図る宮中晩餐会に招待されていた 「秋篠宮夫妻との会話はあったのか?」の問いに大学側が否定した事情
週刊ポスト
新調した桜色のスーツをお召しになる雅子さま(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
雅子さま、万博開会式に桜色のスーツでご出席 硫黄島日帰り訪問直後の超過密日程でもにこやかな表情、お召し物はこの日に合わせて新調 
女性セブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
週刊ポスト