山口県阿武町が4630万円を誤って振り込んだ問題で、電子計算機使用詐欺の疑いで田口翔容疑者(24歳)が逮捕された。田口容疑者は警察に対し「オンラインカジノで使った」と容疑を認めていて、今後、金の流れについては解明される見通しが立ったと言える。今回の件は阿武町の誤振り込みが端緒となっているが、これまではっきりしなかったのは、なぜ463世帯の中で田口容疑者に振り込まれてしまったのかという点である。同町の中野貴夫・副町長は、田口容疑者の逮捕前に『女性セブン』のインタビューに応じ、その背景も含めて経緯を語っていた。(前後編の前編)
一般的に考えれば、自治体から4630万円も間違って振り込まれたら「税金」だから怖くて使うことなどできないし、ましてやリスクの高いオンラインカジノで使うなんて考えられない。田口容疑者が「空き家バンク」制度で山口市から移住してきた人物であったことから「阿武町に愛着がなかったために、使い込んでしまったのではないか」という指摘もあるが、そもそも“よりによって、なぜ田口容疑者に振り込まれたのか”という疑問の声が上がっている。
不運その1──田口容疑者の口座が「メガバンク」だった
ことの発端は4月8日だった。新型コロナウイルス禍で苦しむ世帯を支援する臨時特別給付金が、1世帯につき10万円、町から振り込まれた。ところが、それとは別に463世帯分=4630万円が、1世帯に誤送金された。中野副町長が語る。
「463世帯への10万円の振込先金融機関口座リストで、(正しい)振り込みは完了したのですが、そのリストとは別に、届けてしまってはいけない振込依頼書を(町の指定金融機関である)山口銀行阿武支店に持っていってしまったために、誤振り込みが起きてしまいました。
新人のミスと書きたがるマスコミがいますが、犯人捜しはしません。本当にいろんなことが重なって起こったミスで、一人だけが悪いわけではありません。その、届けてはいけない書類のリストの一番上にあった彼(田口容疑者)に振り込まれてしまった」
リストの一番上に、田口容疑者の名前があったことはすでに報じられている。しかし、五十音順では「た」は一番上に来るとは考えられない。なぜ田口容疑者だったのか。
「彼が指定してきた銀行が、メガバンクの宇部支店だったんです。ほかの住民の指定してきた銀行は山口銀行などの地方銀行や信用金庫などです。仕組みとして、リストの上のほうにメガバンクが載るようになっているんです。これ以上は、詳しく言えません」(中野副町長、以下同)