「あちこちから怒られて反省している。今後は立場を自覚して発言をひかえる」──細田博之・衆院議長は議長公邸を訪れた各党の代表者たちにそう“反省の弁”を述べたと報じられた。「月100万円しかない」という細田発言に焦った与野党が、国民の怒りがこれ以上広がらないように慌てて議長の口を封じたのだ。
何が与野党を慌てさせたのか。改めて細田氏の発言を正確に振り返ろう。5月10日、自民党参院議員の政治資金パーティで挨拶に立った細田氏はこう語った。
「議長になっても毎月もらう歳費は100万円しかないんです。しか、と言うと怒られちゃうけど。会社の社長は1億円は必ずもらうんですよ」
さらにこう踏み込んだ。
「沢山の議員を出して、盛んな議論をしてもらうのがいいんです。1人あたり月額100万円未満であるような手取りの議員を多少増やしてもバチは当たらないと私は思ってるんです」
細田氏の発言は議員定数是正についての文脈でなされたものだ。次の総選挙から「1票の格差」是正のために衆院定数是正(「10増10減」)が行なわれる。細田氏の選挙区がある島根は今回は定数削減の対象ではないが、すでに島根は2016年の参院の定数是正で鳥取と合区(改選定数1の島根・鳥取選挙区)され、両県合わせて1人の参院議員しか国会に送れない。
細田氏は、人口の少ない県の議員定数を減らすのではなく、国会議員の定員全体を増やすべきだと主張し、議員歳費は「手取り100万円未満」で高くないから、定員を増やしても「バチは当たらない」との持論を展開したのである。
だが、この発言が国民の怒りを呼んだのは、「月100万円しか」の部分だけではない。
国会議員には歳費の他に、“第2の給料”と呼ばれる毎月100万円の「文書通信交通滞在費」(調査研究広報滞在費に名称変更された)をはじめ、格安議員宿舎や無料航空券、新幹線やグリーン車乗り放題のJR無料パスなど実質的な“隠れ報酬”というべき費用が国費(税金)から提供されている。そうした数々の“議員特権”に頬被りして、“歳費は高くない”と平然と言ってのける感覚に怒ったのだ。
各党は、細田発言をきっかけに国会議員の実収入や議員特権に国民の目が向けられることを怖れて火消しに走った。
そこで本誌・週刊ポストは、証拠をもとに国会議員が国からもらっている「本当の収入」を明らかにしたい。