新型コロナの感染者数が高止まりし、子や孫を持つ大人たちは依然、気を緩められない日々が続いている。そんななか、大人たちの不安に拍車をかける「原因不明」の病が流行の兆しを見せている。
国内で子供の急性肝炎の報告が増加している。4月25日、厚労省は国内初の患者を確認したと公表したが、その後も報告は相次ぎ、5月18日までに16歳以下の子供12人に急性肝炎が確認されている。いずれも死亡や肝移植などの重症化例は報告されていないという。
海外でも報告が相次いでいて、なかには重症化例も確認されている。
イギリス保健当局は4月6日に、小児の急性肝炎が高い割合で確認されていると公表し、5月3日には患者が163人に達していると発表した。その多くが5歳未満の小児で、嘔吐や下痢などの初期症状のあと、濃い色の尿や灰色の便が出て、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が出るのが特徴で、死者は出ていないものの、重症化した小児10人以上が肝移植による治療を受けた。
アメリカでも109人の患者が報告され、うち5人が死亡している(米疾病予防管理センターの5月6日の報告)。
発生は世界同時多発的で、欧州疾病予防管理センター(ECDC)の5月11日の発表によると、イスラエルやイタリアなど世界27か国で発生していて、患者は計450人にのぼるという。
この小児の急性肝炎が不気味なのは、原因が不明とされていることだ。帝京大学大学院公衆衛生学研究科の小児科医、高橋謙造医師はこう語る。
「今回の肝炎はウイルス性のものと推測されていますが、まだ原因となるウイルスは特定されていません。診察の現場では、ここ最近、嘔吐などで小児科を受診された親御さんから、『急性肝炎ではないですか?』と聞かれることが非常に増えています。原因不明で、重症化することがあるというのが、親御さんを不安にさせる原因でしょう。『ただでさえ共働きで、コロナにも戦々恐々としているのに、急性肝炎まで流行ったら怖い』とおっしゃる方も多いです」
日本小児肝臓研究会の発表によると、以前から子供の原因不明の急性肝炎は年に10件程度あるということだが、この短期間で例年を超えるペースとあって、同研究会は近く調査チームを立ち上げることを表明した。日本小児栄養消化器肝臓学会でも精査・治療をするべく準備を進めている。
「日本は海外に比べると症例数が少ないので、小児科学会などもまだ明確な情報を発信していません。先行して調査しているイギリスをはじめとした海外の報告を待つしかない状態が続いています」(高橋医師)