今季のプロ野球は約40試合が消化されたところだが、異様なまでの「投高打低」となっている。4月10日にロッテの佐々木朗希が完全試合を達成し、翌週にも8回で降板するまで完全投球を継続。5月6日には中日の大野雄大が9回終了時までパーフェクトピッチングを達成。11日にはソフトバンクの東浜巨がノーヒットノーランを達成。完全試合やノーヒットノーランが相次いだことで、“これって凄いことなんだっけ?”と感じてしまうほどだ。
これはデータを見ても明らかで、5月15日時点では、セ・リーグの平均打率が.244、パ・リーグにいたっては.231と、近年の水準に比べて1~2分も低く、本塁打数も激減している。
ピッチャー有利の時代が到来したという見方について、投手育成のプロはどうみるのか。現役引退後にオリックス、阪神、日本ハム、楽天、ソフトバンクでコーチを務め、井川慶やダルビッシュ有、田中将大などをエースに育てた実績がある佐藤義則氏はこう言う。
「個人で防御率2点台なら分かりますが、パではチーム防御率が軒並み2点台というのは凄いなと思って見ています。最近は投手のストレートが速くなったので、それが原因かなと思っています。
我々が現役の時代は150キロなんてめったに出なかったけど、今は150キロ台を投げる中継ぎも増えました。基本的には、スカウトが粗削りでも速い球を投げる選手を集めているからだと思いますが、全般的に腕がよく振れている投手が多い。コントロールでは昔のピッチャーのほうが上だったと思いますが、スピードボールでファウルを打たせ、最後は落ちるボールで勝負するという配球に、打者の対応が追いついていない印象です」
直球の球速が上がったことに加え、変化球についても昔とは違う傾向が見られるとの指摘もある。西武、ソフトバンク、楽天で投手コーチを歴任した杉本正氏が話す。
「投高打低は、ピッチャーの“変化球の使い方”が変わったことと関係があるのではないか。僕たちの時代は横に変化するスライダーやカーブが主体だった。それに対して今のピッチャーは“奥行きがある縦の変化”を多用します。フォーク、チェンジアップ、シンカーといったホームベース上で変化するボールが多い。それに伴う違いは色々とあって、ひとつは球数が少なくなるということでしょう」