物価高騰で野菜の値上げが止まらないなか、野菜に関する“別の数値”も密かに上昇していた。しかもその数値は、私たちの体に重大な影響を与えかねないものだという。
千葉県在住のAさん(76)は2か月前に孫と食事した際、ふと驚いたことがあるという。
「コロナが落ち着いて久々に孫が遊びに来たので、庭で栽培しているニンジンやホウレンソウなどのサラダをふるまったんです。すると孫が『このお野菜、苦くて食べられない。お母さんが家で出してくれるやつは、もっと甘いよ』と言い出して。確かにスーパーとかで売っている野菜は、みずみずしくて苦くないものもあるけど……。『そんなに差があるもんかね』って思っちゃいました」
Aさんの孫が祖父のご馳走を拒否したのは、単なる子供のワガママではないかもしれない。近年、市場に流通する野菜がどんどん甘くなっているのだ。
昨年11月には、遺伝子を変異させる「ゲノム編集」によって、糖度を通常の1.3倍まで高めたトマトが報告され、甘い味わいで知られるフルーツトマトを凌ぐ糖度のネギやニンジンも売り出されている。
元毎日新聞記者で、『誤解だらけの遺伝子組み換え作物』などの著書がある食・健康ジャーナリストの小島正美氏が語る。
「近年は食生活の欧米化とともに野菜をデザート感覚で食べる風潮が広がり、子供だけでなく大人にも甘い野菜が好まれるようになりました。最近は甘い野菜の代表格とされるトマトだけでなく、フルーツピーマンやゴボウなど、本来は苦みやえぐみのある野菜も驚くほど甘くなっています」
確かにスーパーの野菜売り場や野菜の直売所には糖度の高さを強調する野菜が並び、それらを手に取る消費者が多くみられる。これまでは甘さといえば果物の専売特許だったが、今は野菜にも波及しているのだ。
だが、子供が野菜を食べられるようになったからと、喜んでばかりいられない。こうした甘い野菜には落とし穴があるからだ。消費者問題研究所代表で食アドバイザーの垣田達哉氏が語る。
「そもそも糖度とは、食品に含まれる糖分の割合を指します。そして糖分が多いということは、必然的にカロリーも高くなるため、たくさん食べると、肥満になるリスクがある。従来、野菜は体に良いものとされてきましたが、それは野菜に糖分が少ないからで、高糖度の野菜はそうした定説を覆します。糖度の高い野菜は果物と同じなので、『野菜は身体に良いから、甘くても大丈夫』という考えは間違っています」