グラビア界の「伝説のカメラマン」渡辺達生氏がモデルとしたのは「猫」だった──。自宅に来て10年以上経つのに一向になつかない7匹の日常をiPhoneで撮影、『怒ねこ 不機嫌が愛おしい僕と7匹の日々』(定価/税込1320円、ワニブックス)となって発売されている。渡辺氏が、半世紀にわたって磨き上げた撮影テクニックを惜しげもなく披露する。
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いつ猫を飼おうと思ったのか。なぜ猫だったのか。理由は人それぞれだろう。僕と猫との関係は20数年前まで遡る。
目ヤニが酷く、目を開けていられなかったグミ。夜中、一人で外を彷徨っていたアズキ。生まれたばかりの頃、母親に咥えられ、妻の前に置いて行かれたタマコ。一匹一匹の事情は異なるが、気がつくと皆、ちゃっかり渡辺家の一員になっていた。
猫の写真はずいぶん前から撮っていたけど、面白いと思うようになったのはカメラ機能が格段にアップしたiPhone XS Maxを手に入れたのと、コロナ禍で自由に外出できなくなったのが重なった頃だった。5月19日に出した写真集『怒ねこ 不機嫌が愛おしい僕と7匹の日々』に載せた写真も、すべてiPhoneで撮影したものだ。
犬と違って猫は「待て」が効かないから、いい写真を撮るのが難しいのだけど、“これだ!”という1枚をFacebookとInstagramにアップして、コメントに頭を悩ませるのも楽しい時間になっている。
昨年9月、それまで唯一僕の味方だったカエデが、腎臓病を患い、推定11歳で亡くなってから、渡辺家の勢力図は、「女房+6匹VS僕」という、なんとも困った状況になってしまったが、それでもやっぱり、我が家の猫は可愛い。
iPhoneを猫の目線で構え、左手で鍵束をガシャガシャ。猫が気を取られた瞬間を狙ってすかさずシャッターを切る──これが猫を撮る一番大事なコツだ。