このところ、ドラマや映画で60歳前後の俳優の活躍が目立つ。彼らを「ネオカンレキ」と命名するコラムニストのペリー荻野さんが、その魅力を解説する。
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お久しぶりです。こんにちは、中井貴一研究所、所長のペリーです。
公開中の映画『大河への道』。町おこしのため、地元の偉人・伊能忠敬を大河ドラマの主人公にしようと奮闘する人たちの現代の物語と、忠敬を支え、日本地図を完成させた名もなき“チーム忠敬”を描く江戸時代の場面を、同じ俳優たちが演じるというユニークな構成の作品だ。
当初、「主演・中井貴一」と聞いて、てっきり伊能忠敬役だと勘違いした私は、そっかー、伊能忠敬も隠居して、測量の旅に出たのは55歳。60歳の貴一とはまさに同年代。ついにご隠居の役を…と勘違いが暴走していたので、まったく違う役でスクリーンに現れた瞬間、所長としたことが!!と深く反省したのであった。
とはいえ、ここで考えたのは、60歳、還暦世代の俳優たちの活躍ぶりだ。先日は、『日曜日の初耳学』に佐藤浩市(61歳)が登場。早速、壮絶な最期のシーンで注目された『鎌倉殿の13人』の上総広常についての話が出た。
その脚本を書いた三谷幸喜(60歳)も同世代。そして、「盟友」「かけがえのないもの」という渡辺謙(62歳)、真田広之(61歳)、中井貴一、同世代俳優とのつながりを語った。中でも、86年の映画『犬死せしもの』で共演して以来の飲み友達だという真田については、「また日本でやろうぜ」と声をかけたが、「アメリカが楽しい」という気持ちを聞き、「そうか」と納得したエピソードは印象的だった。
ここで名前が出た「同世代俳優」は、昔の還暦世代俳優とはかなりイメージが違う。昔の60歳といえば、そろそろ『水戸黄門』の主役になってもいいかという年ごろ。『渡る世間は鬼ばかり』で、泉ピン子らの父親役を演じた藤岡琢也は、ドラマスタート時、ちょうど60歳。佐藤の父、三國連太郎が『釣りバカ日誌』に初めて出演したのが、60代半ばということを思うと、“ネオカンレキ”(ペリーが勝手に命令)の佐藤、中井世代が醸し出す「まだまだ暴れて見せます感」は、すごい。それはよく言われる「中高年の星」とか「レジェンド」とはまったく違うところが新しい。
もっとも彼らの前に“ネオカンレキ”がいなかったかといえば、そういうわけでもない。かなり以前、孫が生まれたニュースがあったばかりのある名優(故人)にインタビューしようとしたところ、「これからもラブストーリーの主役もやりたいから、家庭の話、特に祖父になった話はNG」と言われたのだった。主演作もたくさんあり、確固たる地位を築いた方が持つこの貪欲さ。色気。忘れられない。ただ、こういう例はまだ珍しかったのだ。