今もその対応に悩まされている新型コロナウイルスだけでなく、人類は様々な感染症とともに生きていかなければならない。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、マダニの感染症についてお届けする。
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春から秋にかけて、マダニの活動が活発になります。近年、このマダニに人が咬まれて、ウイルスやリケッチア(細菌の一種)に感染、重症化して亡くなるなど、怖い感染症が報告されています。今週はその一つ、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)をご説明します。
マダニは家の近くの裏庭や畑、草むらや野山など、私たちの身近な場所で動物を吸血して生息しています。食品に発生するコナダニやハウスダストの原因ともされるヒョウダニ等とは異なります。
草むらの植物の上にいて動物が通ると取りつき、皮膚に口器を突き刺して数日から10日間も吸血します。幼ダニや若ダニは脱皮と成長のために、成ダニの雌は産卵のために吸血し、雌マダニは吸血後に地上に落下し卵を産んで生涯を終えるのです。このようにマダニがそのライフサイクルの各ステージで吸血した際に、ウイルスや細菌が動物側に侵入して病気を起こすことがあるのです。
SFTSも、SFTSウイルスをもっているマダニに人が咬まれることで感染・発症します。潜伏期は6日から2週間程度で、発熱、食欲低下、嘔吐、下痢、腹痛などが主な症状です。ときに頭痛、筋肉痛や意識障害、痙攣、昏睡などの神経症状、出血症状が出ることもあり、血小板減少と白血球減少がみられます。
治療薬がありますが、致死率は日本でも2~3割もあります。潜伏期間内に発熱や嘔吐などの症状が出た場合には、速やかに医療機関を受診して「○月○日にマダニに咬まれました!」と医師に自己申告することが、早期診断と適切な治療開始のためのポイントです。
すべてのマダニがこのウイルスをもっている訳ではありませんが、日本国内のマダニではフタトゲチマダニやタカサゴキララマダニなど複数のマダニ種からSFTSウイルスの遺伝子が検出されています。