日々の食事は健康に直結するが、“出す”のも命がけだ。トイレが高齢者にとって、死を招く危険な場になっていた。
大便の状態を記録して腸活を実践するアプリ「ウンログ」の経営会社が、2020年にユーザー3000人を対象に行なったアンケートでは、コロナ禍で排便状況が変わったという人は50%を超え、その人のうち43.3%が「便秘になった」と回答。たかが便秘と放置しがちだが、高齢者の便秘には死を招く恐怖がある。
排便時にいきむと血圧は急上昇しやすく、その結果「脳卒中」や「心筋梗塞」、「動脈瘤解離」などを発症するリスクが増加すると指摘されているのだ。
日本初の便秘ガイドライン『慢性便秘症診療ガイドライン』(2017年)によれば、便秘とは「排便回数が少ない」または「排便困難」な状態のことを言う。ガイドライン作成に携わった、横浜市立大学大学院の肝胆膵消化器病学教室・主任教授の中島淳氏が語る。
「正常な排便回数は『1日2回~2日に1回』とされ、毎日のお通じは必ずしも必要ないものの、排便が3日に1回になると危険信号です。また、排便困難というのは、排便時に強くいきむ必要があったり、残便感があったりする状態のこと。仮にお通じが毎日あったとしても、いきみや残便感が生じれば便秘と言えます。特に高齢になるほど排便困難を感じるケースが増えるので要注意です」
排便回数や頻度だけでなく、「便の状態」もトイレ死を見極めるポイントとなる。
「スムーズに排便するためには、便の形状や硬さが重要です。理想的な便の状態としては、硬くも柔らかくもない『バナナ状』がベスト。水のような下痢や軟便が出ている状態、またはウサギのフンのようにコロコロした硬い便の場合は健康状態に注意が必要ですが、特に後者の人は、排便時に強くいきむ必要があるため、トイレ死のリスクが増します」(中島氏)
自分は便秘じゃないから大丈夫──という人も油断してはいけない。しらはた胃腸肛門クリニック横浜院長の白畑敦氏が語る。
「一般的にトイレは他の室内と比べて温度が低い場所で、暖かい場所から寒いトイレの個室に入ったり、冷たい便座に座ったりすることで血圧が急激に上昇することがあります。今は暖かくなったとはいえ、まだ冷える日もあるので、夜中や早朝の時間帯に布団の中からトイレに行く時は、血圧の変化に気を配る必要があります」