新型コロナウイルス感染者が急増する北朝鮮の首都・平壌市では、医療従事者が不足しているため、医学生が動員されていることが明らかになった。しかし、医療技術が未熟なため、適切な治療が行えず、死者が増え続けているという。とくに、高齢者や高血圧や糖尿病などの慢性疾患を持つ人々が適切な治療を受けられずに死亡しているほか、妊婦なども満足な治療を受けられず、症状が悪化する例もあるようだ。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮では5月初め、感染対策の指揮を執る「国家非常防疫司令部」が組織され毎日発熱者の統計をとっている。5月25日の時点で、約300万人の国民が発熱し、うち約100人が死亡、約150万人が回復し完治、150万人が治療中であると報告されている。しかし、この「完治」とは、新型コロナウイルスの完治ではなく、発熱症状が消失したことだけを意味する。
人口290万人の首都・平壌は人口が密集しているため、ロックダウン(都市封鎖)状態となり、メディアは「緊急事態を宣言し、市内の各病院から医師を動員し、医学生まで動員し始めた」と報じている。
市内の情報筋はRFAに対して、「平壌市民はすべて強制的に集中的な健康診断を受けている。毎日2回、体温をチェックし、異常な症状があれば報告しなければならない」と語っている。
非常事態となったことで、北朝鮮当局は戦争時のために備蓄していた緊急用医薬品を放出し始め、盗用を防ぐために薬局に軍人を配置しているという。
一方、北朝鮮の教育省は5月11日、平壌市内のすべての小中高校に対し、対面授業を中止し、オンライン学習に切り替えるよう命じた。しかし、自宅にパソコンを持っている児童は全体の2~3%にすぎないとされ、「この教育省の指示はまったく無意味だ」と情報筋は指摘している。
さらに、5月2日、牡丹峰地区の中学校で23人の生徒のうち5人が高熱と咳の症状を示したほか、別のクラスの他の生徒も同じように高熱と咳の症状を示したため、学校は直ちに授業を中止し、国家非常検疫司令部の指示の下、全生徒を帰宅させたという。