現在放送中のドラマ『未来への10カウント』(テレビ朝日系)では、いままでとは異なる役を演じている木村拓哉(49才)。コラムニストで放送作家の山田美保子さんが、カッコいいだけじゃない木村拓哉について綴ります。
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木村拓哉サン主演のドラマ視聴率は、NHKの「朝ドラ」(連続テレビ小説)や「大河」、「紅白」、そしてフジテレビの「月9」などと並んで、その高低がメディアで大きく取り上げられます。
無意味とまでは言いませんが、たとえば「紅白」の視聴率の推移は、大晦日、家族全員が揃って一台のテレビにかじりついていた「昭和」のそれと比較されている。そりゃあ、50%以上だったのは当たり前の話であり、その後、平成を経て令和となり、テレビの見方や、テレビそのものが家にない、当然、見ることもない若いかたが増えているというのに、です。
朝ドラの時間帯だって専業主婦が大半だった「昭和」と現代では比較にならないし、ゴールデンタイム、プライムタイムのライフスタイルも大きく異なっているいま、対比して、「視聴率が下がった」と大騒ぎするのはナンセンス極まりないことだと思うのですが。
ドラマについて、私は20年以上前から「ココロの視聴率」という言葉を用いて、「自分の琴線に触れる作品を黙って見ればいいじゃないか」と主張し続けています。ですが、自分が見ているドラマはほかの人たちにも見ていてほしい……という想いをもつかたがとても多い。なかでも“推し”が主演をしているドラマとなれば、その想いはさらに強まるようです。
そうしたファンの皆さんのプッシュに加え、多くの社会現象を生んできた木村拓哉サン主演のドラマ。ピアニスト(フジテレビ系『ロングバケーション』)、美容師(TBS系『ビューティフルライフ』)、パイロット(TBS系『GOOD LUCK!!』)、検事(フジテレビ系『HERO』)など、木村サンの美しい手指がアップになる職種が多く、木村サンがカッコよく演じれば、目指す若者が採用試験に殺到したものでした。
特に美容師ブームのことはリアルに“経験”しています。私が特別講師を務める『早稲田美容専門学校』は、カリスマ美容師ブームと『ビューティフルライフ』のお陰で、男子学生がとても多いのです。超人気サロン『OCEAN TOKYO』代表の高木琢也くんは代表的な卒業生。そして今春卒業した22期生の国家試験合格率は初めて100%となり、業界で話題になりました。感慨深いです……。
こんなに人生を投げている、こんなに疲れ切っている木村サンは初めて
さて、そんな木村拓哉サンが現在主演中のドラマといえば『未来への10カウント』(テレビ朝日系)。映画化もされた『HERO』の福田靖さんが脚本を務め、お二人が事前に綿密なミーティングを重ねた結果、「月のような存在でありたい」との木村サンの希望が本作には生かされていると聞きました。これまでの作品は間違いなく「太陽」でしたよね? でも今回は「月」なのです。
しかも、木村サン演じる桐沢祥吾は、生きる気力をなくしたアラフィフ男。どれだけの不幸が彼を襲っていたかは、第3話、袴田吉彦サン(48才)が演じる不幸自慢男とのリング上での“対戦”シーンで明らかにされました。