歴史偉人がスマホを持ったらというこのシリーズは、『光秀のスマホ』、『土方のスマホ』に続く第三弾だが、観るたびに思うのは、このシリーズはNHKの持てる技が詰め込まれた番組ということだ。
たとえば、衣装やセット。NHKには、過去60年近い大河ドラマの衣装や大道具、小道具の蓄積がある。かつて私は渋谷のNHKの倉庫を取材させてもらったが、様式が時代ごとに違う襖や屏風などが、見事に保存されていて感動した。『義経のスマホ』で西田敏行によく似ていた後白河法皇(松村邦洋)の衣装は、『鎌倉殿』で法皇を演じた西田のものとよく似ていたし。膨大にして充実したストック、資料あってのパロディといえる。
また、音楽もなかなか。義経にかかってきた弁慶の電話の着信音は、故・中村吉右衛門さんが1986年にNHK大型時代劇で演じた『武蔵坊弁慶』のテーマ曲だった。通向けの小ネタだが、こういうことができるのもNHKの底力だ。
そして、人脈面でも無敵。川栄李奈は朝ドラ『カムカムエヴリバディ』で主役を務めたばかりだし、小澤は2005年の大河『義経』では木曽義仲役だったほか、NHKでは主演作『ちいさこべ』もある。塚本高史も2012年の大河『平清盛』で安達盛長、2014年『軍師官兵衛』では後藤又兵衛を演じている。
光秀、土方、義経とミニミニ裏大河のような形になってきたスマホシリーズ。来年は誰が…と早くも期待したくなってきた。