NHKの時代劇と言っても放送はたったの5分間。設定は、源義経がスマホを持っていたら――という突飛なもの。今回、『義経のスマホ』で源義経を演じているのは女優・川栄李奈(27才)だ。話題を呼ぶこのドラマの見どころについて、時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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何かと話題の『義経のスマホ』。
もしも、義経がスマホを持っていたら?というところから始まる深夜の5分間番組で、映し出されるのは、スマホの画面という異色すぎるSF時代劇だ。
義経といえば、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、菅田将暉が元気よく平家を討ち倒し、平泉で散ったばかり。菅田義経は、出来のいい弟・義円を陥れたりして、過去の多くの作品で描かれた”“悲劇の美形若武者”とは一味違うと感心していたが、『義経のスマホ』の義経は、それどころじゃなかった。
スマホ中毒の義経は、ネットニュースで頼朝挙兵を知り、弁慶(小澤征悦)らと奥州を出発し、頼朝と合流。頼朝(塚本高史)から「お前だけが頼りだ」のスタンプに奮い立ち、一の谷の奇襲へと打って出る。承認欲求はどんどん上昇。「天才の戦略」「鵯越ミラクル逆落とし」など絶賛ツイートにご満悦だ。
とはいえ、頼朝に「これから力を合わせ、源氏の世を作りましょう」なんて言葉も全部、弁慶が送った文面読んでただけだよ、おいおい。義経のアイコンが、しばしば「あまりに不細工で気の毒」「本当に美形だったのか」といわれる肖像画(歴史資料に載ってるアレです)を、ちょっとカッコよくしているところは笑えるが、とにかくこんな危なっかしい義経、見たことない。
びっくりの連続。義経を演じるのが、川栄李奈というのもまた、びっくりだ。5月30日から始まった後半では、いよいよ頼朝に追い詰められる。そのきっかけもひょっとしてスマホ!? タイトルも第五話「わかりやすく調子づく男」、第六話「」第七話「肝心なことを見落とす男」って、悲劇の若武者はどっかに行っちゃいましたね…。