好評を博しているNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。劇中では源平合戦が終結し、強い存在感を放っていた源義経(菅田将暉)も死亡。21話では八重(新垣結衣)の悲しい最期が話題を呼んだ。これから鎌倉幕府の樹立に向けて物語は大きく動き出し、いよいよ主人公・北条義時(小栗旬)を中心とした「北条氏」にスポットライトが当たっていくことになる。
大河効果によってドラマの舞台である鎌倉市(神奈川県)には多くの観光客が訪れ、同市の観光協会や横浜銀行などはその経済効果を約307億円と試算している。そんな中、鎌倉から少し離れた小田原市で、同じ「北条氏」を題材とした大河ドラマの誘致に向けて、署名活動が行なわれていた。
小田原市が大河ドラマ化を目指す題材は「北条五代」だ。戦国時代に小田原城を拠点として関東を治めていた歴代当主5人(北条早雲、北条氏綱、北条氏康、北条氏政、北条氏直)のことを指し、今回の大河で描かれている鎌倉幕府の北条氏とは直接の関係はない。区別するために「後北条氏」や「小田原北条氏」とも呼ばれる。北条五代は親兄弟で争うことなく、戦国の世で様々な善政を敷き、小田原を関東の政治・経済・文化の中心として繁栄させたという。小田原市観光課長の飯山淳二氏に話を聞いた。
「小田原市は観光誘客を目的に、20年ほど前からずっと大河ドラマの誘致活動を行なってきました。NHK側に毎年働きかけていて、2003年には当時の海老沢勝二会長に直接、陳情したこともあります。2011年からは北条氏とゆかりのある14市町で連携して『北条五代観光推進協議会』という名称で活動しています」
2年前、2022年の大河ドラマが『鎌倉殿の13人』に決定したことが発表された際、飯山氏は意気消沈したと話す。
「実は発表の少し前に、NHK関係者から『次の大河に“北条”の名前が出ているらしい』と聞いていて、私は20年の努力が報われたと思い、喜び勇んで加藤憲一市長(当時)に『ついに大河で“北条”が来ますよ!』と報告したんです。ところが、その翌日に制作発表があり、蓋を開けたら小田原ではなく鎌倉の北条だったので、ショックでした。加藤市長もガックリしていましたね。
これで“小田原の北条”の大河ドラマ化は先送りになるのではないかという懸念もあるのですが、2025年の大河ドラマはサイクル的に戦国時代モノになるとされている。そこで『北条五代』が採用される可能性を信じて、1年半ほど前から署名活動を始めました」