ライフ

感染症「日本紅斑熱」 1984年に徳島の医師が発見、“日本に存在しない”を覆した

日本紅斑熱の症状とは

日本紅斑熱の症状とは

 今もその対応に悩まされている新型コロナウイルスだけでなく、人類は様々な感染症とともに生きていかなければならない。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、徳島の医師が発見した日本紅斑熱についてお届けする。

 * * *
 野原や草むらにいる身近なマダニに咬まれて発症する感染症について、今回は「日本紅斑熱」をご説明しましょう。日本紅斑熱は、徳島県阿南市にある馬原医院の馬原文彦医師が1984年に発見した病気です。早期に診断して、適切な抗菌薬で治療を開始しなければ、死亡者も出る注意すべき感染症です。

 1984年5月、山で農作業をした主婦が高熱と倦怠感を訴えて馬原医院にやってきました。全身には薬疹のような赤い発疹が出ていますが、痒くはないそうです。この患者が2週間してようやく解熱した頃に次の患者がやってきました。同じく農家の主婦で高熱と赤い発疹。山に入ってダニに咬まれた後に症状が出たというのです。

 詳しく聞くと2人は同じ山で作業をしていました。馬原医師は草むらにいるダニの一種のツツガムシによるツツガムシ病を疑って検査をします。しかし、その結果は予想外で、ツツガムシ病は否定され、当時日本では存在しないとされていた紅斑熱群リケッチア(細菌の一種)が疑われたのです。そこへ3人目の患者がやってきます。最高体温が41℃となるような重症でした。

 こうなったら究明するしかないと思った馬原医師は、国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)に検査を依頼。研究所は米国から検査試料を取り寄せて、この患者の抗体を調べました。その結果、日本にも紅斑熱群リケッチア感染症があることが判明。世界中の感染症の教科書を書きかえるほどの新発見となりました。

 日本紅斑熱は病原体のリケッチア・ジャポニカを持ったマダニに吸血されると、2~10日の潜伏期を経て、急な発熱、悪寒戦慄、頭痛等で発症し、手足、手のひら、顔面に赤い発疹が多数現われ、速やかに全身にひろがります。手のひらの紅斑は特徴的ですが(ツツガムシ病では出ない)、初期の2~3日で消えます。日本紅斑熱の3兆候は高熱、紅斑、マダニの刺し口で、発見当時は希少感染症とされましたが、今では沖縄から青森県まで多くの感染者の報告があります。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
鳥取の美少女として注目され、高校時代にグラビアデビューを果たした白濱美兎
【名づけ親は地元新聞社】「全鳥取県民の妹」と呼ばれるグラドル白濱美兎 あふれ出る地元愛と東京で気づいた「県民性の違い」
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
『ルポ失踪 逃げた人間はどのような人生を送っているのか?』(星海社新書)を9月に上梓したルポライターの松本祐貴氏
『ルポ失踪』著者が明かす「失踪」に魅力を感じた理由 取材を通じて「人生をやり直そうとするエネルギーのすごさに驚かされた」と語る 辛い時は「逃げることも選択肢」と説く
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン