テレビ東京が新たな“飯テロ”を仕掛けている。それは「お取り寄せ」をテーマにしたグルメドラマだ。さらにテレ東は休日にグルメ番組を集中させている。その狙いとは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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「グルメ」がテーマのドラマと言えば、テレビ東京のイメージがある人は多いでしょう。『孤独のグルメ』を筆頭に多くの作品を手がけ、「飯テロ」というフレーズを浸透させ、6月1日にも新作の渋川清彦さん主演ドラマ『ザ・タクシー飯店』がスタートしました。
現在も多くのグルメドラマが放送されている中、業界内で密かに注目を集めているのが、4月からテレビ東京で放送されている2本のお取り寄せドラマ。土曜0時52分~(金曜深夜)の向井理さん主演ドラマ『先生のおとりよせ』と、日曜11時~の大竹一樹さん主演ドラマ『よだれもん家族』は、どちらもお取り寄せがテーマであり、土日の“AM”で連日放送されています。
他局でテーマがかぶったり、その上で放送日が近くなったりするケースはまれに見られますが、今回のような「同じテーマのドラマを同じテレビ局が連日放送する」のは異例中の異例。テレビ東京にはどんな狙いがあり、両作にはどんな違いがあるのでしょうか。
「グルメとドラマ」はテレ東の必殺技
まず注目すべきは、テレビ東京が今春の番組改編に「テレ東の必殺技 アニメ・グルメ・ドラマ多メ」というテーマを掲げていること。自ら“必殺技”とする3つのうち2つに絡むグルメドラマに力を入れているのは間違いありません。実際、今春は『先生のおとりよせ』『よだれもん家族』に加えて、『しろめし修行僧』『ワカコ酒 Season6』『ザ・タクシー飯店』の5作が放送されています。
そのうち『ワカコ酒』『ザ・タクシー飯店』は飲食店をめぐる直球のグルメドラマ。『しろめし修行僧』は「白飯に合うおかずを求めて全国を旅する」という変化球ながらも、「食を求めて外出する」というコンセプトは同じです。
しかし、『先生のおとりよせ』と『よだれもん家族』は、「家にグルメを届けてもらう」という真逆のコンセプト。「コロナ禍以降の消費者傾向を踏まえつつ、グルメドラマの幅を広げよう」という意図がうかがえます。
次にその「グルメドラマの幅を広げる」という意味で注目したいのが、両作の放送時間帯。『先生のおとりよせ』は休日のはじまる金曜深夜、『よだれもん家族』は休日まっただ中の日曜昼前と、まったく別の時間帯に放送されています。
金曜深夜は「本当は食べないほうがいい真夜中に視聴者の食欲を沸き立たせる」という“飯テロ”の王道であり、これまでの放送実績もあるドラマ枠。一方、日曜昼前は「昼食に向けて食欲を沸き立たせる」という新たな狙いによるものであり、今春に新設されたドラマ枠であることがその裏付けとなっています。
しかも「お取り寄せ」は、実店舗に行くタイプのグルメドラマよりも実現性が圧倒的に高く、「もし自分もお取り寄せして食べたら」とイメージしやすいのが強み。「金曜深夜と日曜昼前では視聴者層がかぶりにくい」「2日連続で見ても問題ないほどお取り寄せの種類は幅広い」などの背景もあり、連日放送して視聴者を食い合うなどの問題はなさそうです。