6月1日、警視庁捜査2課はNHKグローバルメディアサービス元社員の川崎健治容疑者(44)を詐欺容疑で逮捕した。同社は『NHKスペシャル』などの番組制作を請け負っているNHKの子会社だ。その川崎容疑者の意外な素顔が、取材で明らかになってきた。全国紙社会部記者が事件を説明する。
「逮捕容疑は経理担当だった2021年10月下旬ごろ、大相撲九州場所の取材などの名目で正規の発注を装って旅行会社に申込書を提出し、乗車券や新幹線特急券120枚、約105万円分をだまし取ったというもの。川崎容疑者は2017年7月から約4年間、同様の手口で約780回、計約1億8000万円分のチケットを不正に得て、払い戻して現金を手にしていたと見られています」
NHKでは2004年に紅白歌合戦のプロデューサーが制作費約8000万円を横領していたことが発覚し、受信料の未払いが続出。国会でも取り上げられるほどの大騒動になった。今回のケースは金額だけを見れば、それを上回る規模だ。
川崎容疑者の逮捕に驚きの声を上げるのは、公益社団法人・日本ボート協会の関係者だ。
「川崎さんは学生時代からボート部で、社会人になってからは日本ボート協会の会員として、長年、ボート競技の発展に貢献していました。協会では審判委員会に所属し、トップに次ぐ“オフィサー”という責任ある立場を担っていた。審判のなかには選手に高圧的な態度をとる人もいるのですが、川崎さんは物腰は柔らかい。また、ボート界には酒癖が悪い人が割と多い。そんな中、川崎さんは酒もほどほどで、潰れた人を介抱する側でした。事務局スタッフからボート協会の上層部まで一目置かれる存在でしたね」
川崎容疑者は詐取した金の使途について、住宅ローンの返済とギャンブルに費やしたと供述している。だが、長年、川崎容疑者の知人だった男性によると、浪費家の面は見受けられなかったという。
「大学卒業後、大手有名IT企業に入社したものの、身なりはずっと地味で、ブランド品などを身につけるタイプではなかった。麻雀やパチンコもやらなかったと聞いている。趣味のひとつは車で、ポルシェが好きだったようですが、型落ちのパナメーラやカイエンを乗っていた程度なので給料で買えたと思うのですが……」