国内

首都直下地震の被害想定 ベイエリアでは液状化で「約1500棟が全壊」の予測

台風の影響で水位が増した荒川(2019年撮影、時事通信フォト)

台風の影響で水位が増した荒川(2019年撮影、時事通信フォト)

 東京都は5月25日、首都直下地震の被害想定に関する新たな報告書を発表した。発表は実に10年ぶりのこと。最も巨大な「都心南部直下地震(M7.3)」が発生した場合、震度6強以上の揺れに見舞われる範囲は東京23区の約6割に広がり、建物被害は約19万棟、死者は約6000人に及ぶと試算された。

 2011年の東日本大震災では、液状化現象の被害が深刻だった。首都直下地震は、当時よりも甚大な被害を生む危険性がある。神戸大学都市安全研究センター教授の吉岡祥一さんが言う。

「液状化現象は埋立地や河川付近の軟弱地盤で起こる現象です。強い地震の揺れが十数秒程度続くと、地中でバランスが取れていた砂と水の関係性が崩れ、砂粒が水中を浮遊しているような状態になって起きる。上に建っている建物が傾くといった被害を及ぼします」(吉岡さん)

 液状化により、地盤が数m水平移動することもあるという。その場合、建物は海や川に吸い込まれるように沈んでいく。在宅中に自宅が水平移動を始めれば、避難する時間はない。報告書によると、東京のベイエリアでは、こうした液状化の現状により「約1500棟が全壊する」と予測されている。それが何千人という人が生活するタワマンでないことを祈るばかりだ。

 ベイエリアに数多く存在する石油タンクにも危険がある。立命館大学環太平洋文明研究センター特任教授の高橋学さんが言う。

「石油タンクの蓋は置いてあるだけの状態なんです。普段は動くことはありませんが、直下地震の揺れなら蓋が浮く可能性があります。その際に金属同士がこすれて火花が発生し、中の燃料に引火して火事になる。燃料が漏れれば、大規模火災につながりかねません」(高橋さん)

 首都直下地震で最も多くの死者を出す要因と予想されているのがこの火災だ。京都大学名誉教授で地球科学者の鎌田浩毅さんが言う。

「1923年の関東大震災では約10万人が亡くなりましたが、そのうちの9割が火災による死者でした。火災旋風という、高さが最高200m以上の巨大な炎の渦が竜巻のように移動し、火を広げました。木造建物の密集地域は当時と比べて減ったとはいえ現在もたくさん存在します」(鎌田さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン