「令和のハッスルボーイ」が躍動し始めた。巨人が2対1でロッテを下した6月4日、この日のヒーローは、スローカーブを自在に操って巨人打線を6回まで零封していたロッテ・佐藤奨真から同点タイムリーを放った巨人の増田陸だった。増田は試合後のヒーローインタビューでこう語った。
「オフに育成(選手契約)になってすごく自分自身悔しかったですし、何とか自分の人生を変えたいと思って、日々必死にやっているので。そのがむしゃらにやっている結果が、いい結果につながってると思う」
高卒4年目、昨年までファーム暮らしが続き、オフには育成選手契約になった。しかし、キャンプ中の対外試合以降、結果を残したことで、3月に再び支配下登録される。5月5日に一軍初昇格すると、代打で9打席に立って4度出塁(2安打、2四球)と結果を残し、5月28日の日本ハム戦でプロ初スタメンを勝ち取った。プロ野球担当記者は「がむしゃらさの中に冷静さもある」と分析する。
「初スタメンの日は振り逃げでの出塁しかありませんでしたが、先発2試合目である5月31日のソフトバンク戦では4打席で1安打、2四球と3度も塁に出た。普通の若手だと結果を欲しがるあまり、ボール球にも手を出してしまいがちですが、きっちり見極めていた。選球眼の良さも彼の強みでしょう」
増田陸の台頭で追いやられているのが、中田翔だ。日本ハムの4番としてタイトルも獲得し、日本代表にも選ばれた男が21歳の若手にポジションを奪われつつある。
「しかも、増田陸は今年ファーストを始めたばかりで本職ではないですからね。中田は内心穏やかではないでしょう。原辰徳監督は昨年までは若手、ベテラン関係なく『実力至上主義』を謳っていましたが、今年は『実力が同じなら若手を使う』と明言した。有言実行の采配がチームに活気を与えています。
中田と増田陸は同じヒット1本でも、チームに与える影響力が違う。増田陸の活躍は若手に波及するからです。つい最近まで二軍で一緒にプレーしていた選手の刺激になりますし、一軍の控え選手も自分にもチャンスが巡ってくると思える。増田陸のヒットは単なる一打に止まらない効果があります」