国内

石井一・元自治相が亡くなる間際に語っていた師・田中角栄の凄みと義理堅さ

国土庁長官、国家公安委員長、自治大臣などを務めた石井一氏が亡くなった(時事通信フォト)

国土庁長官、国家公安委員長、自治大臣などを務めた石井一氏が亡くなった(時事通信フォト)

 元自治相で民主党副代表を務めた石井一氏が亡くなった。87歳だった。晩年の石井氏は、政界の師である田中角栄氏の再評価に向けて尽力し、ロッキード事件での冤罪を訴えていた。

 石井氏は、亡くなる間際、本誌・週刊ポスト2022年5月6・13日号に登場していた。国会議員OBがそれぞれ注目する現役議員に向けてメッセージを発する企画だったが、石井氏は林芳正・外相の名を挙げ、「将来の総理候補」と高く評価。その上で、田中氏を引き合いにこう課題を述べた。

「林が総理になるには、越えなければならない課題がある。これからの日本に必要なのは従来の対米追随、官僚迎合の外交ではなく、国益のための自主外交だ。しかし、自主外交をしようとすれば、ことごとく官僚と対立する。アメリカと逆の路線を進まねばならない場面も出てくるから当然軋轢が生じる。だから口では言えてもなかなか実行できない。唯一、やった政治家が我が師である田中角栄だった。

 田中は旧ソ連との交渉で、第二次大戦の時から残った未解決の諸問題に北方領土4島が含まれることをブレジネフに詰め寄り、『ダー』と認めさせた。そして旧ソ連以外にもフランス、カナダなどと独自の資源外交を繰り広げた。アメリカは反発し、官僚も反対した。それを乗り越えて田中は自主外交を展開した結果、アメリカの虎の尾を踏み、晩年はロッキード裁判で苦しむことになった。このように国益のための自主外交は壁が厚い。果たして林芳正にそれができるか」

 なかでも最優先課題として挙げたのが沖縄の米軍基地問題で、「普天間基地を嘉手納に移すのが最も合理的ですぐにできる」「田中角栄ならやっただろう」と力説した。

 取材は4月19日、東京都内の事務所で行なわれたが、話すうちに気持ちが乗ってきたのか、予定の30分をはるかに超えた。発売後に本人から記者に電話があり、「ポストを見た知人から連絡がきて、オレの発言が一番よかったと言われた」と嬉しそうだった。

 本誌は何度も石井氏から田中氏への想いを聞いたが、昨年6月11日号には、田中氏の義理堅さが窺えるエピソードを教えてくれた。

「社会党の大出俊の親族が亡くなった時、田中に『おい石井、ちょっとワシの代わりに行ってくれ』と言われて、香典を渡されました。分厚くて50万くらいは入っていたでしょう。大出俊といえば“国会止め男”で、いわば政敵。その親族の葬儀に50万も出すとは、と思ったものです。

 喪服に着替えて出る用意をしていたら『時間ができたんでな。ワシが行くよ』と言って本人が出席した。他党であっても義理は欠かず、そのうえドーンと張り込む。田中らしいと思いました」(同前)

 師との対面が果たされることを願い、ご冥福をお祈りしたい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田中圭と15歳年下の永野芽郁が“手つなぎ&お泊まり”報道がSNSで大きな話題に
《不倫報道・2人の距離感》永野芽郁、田中圭は「寝癖がヒドい」…語っていた意味深長な“毎朝のやりとり” 初共演時の親密さに再び注目集まる
NEWSポストセブン
春の園遊会に参加された天皇皇后両陛下(2025年4月、東京・港区。撮影/JMPA)
《春の園遊会ファッション》皇后雅子さま、選択率高めのイエロー系の着物をワントーンで着こなし落ち着いた雰囲気に 
NEWSポストセブン
現在はアメリカで生活する元皇族の小室眞子さん(時事通信フォト)
《ゆったりすぎコートで話題》小室眞子さんに「マタニティコーデ?」との声 アメリカでの出産事情と“かかるお金”、そして“産後ケア”は…
NEWSポストセブン
週刊ポストに初登場した古畑奈和
【インタビュー】朝ドラ女優・古畑奈和が魅せた“大人すぎるグラビア”の舞台裏「きゅうりは生でいっちゃいます」
NEWSポストセブン
逮捕された元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告(過去の公式サイトより)
「同僚に薬物混入」で逮捕・起訴された琉球放送の元女性アナウンサー、公式ブログで綴っていた“ポエム”の内容
週刊ポスト
まさに土俵際(写真/JMPA)
「退職報道」の裏で元・白鵬を悩ませる資金繰り難 タニマチは離れ、日本橋の一等地150坪も塩漬け状態で「固定資産税と金利を払い続けることに」
週刊ポスト
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン