歳を重ねるにつれて、モノが増えて煩雑に感じることが増えるだろう。それは著名人も例外ではない。タレントのピーターこと池畑慎之介氏(69)はここ数年、身の回りのものを捨てたり、生活のダウンサイジングを進めたりしているという。衣装や思い出の写真などを整理したが、「どうしても捨てられなかったモノ」があるという。それは、若き日に黒澤明監督から受け取った手紙だ。池畑氏が語る。
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今年の8月で私も70歳ですからね。最近はどんどん身軽になっていますよ。とはいえ、「あ、これいいな」と思った服は買っちゃいます。芸能人をやる以上は、着飾る楽しさって、それこそ生き甲斐の一つじゃないですか。古い物をどんどん捨てるのに躊躇はないけど、新しい物を取り入れることにも躊躇したくないし、進んで取り入れたいって思います。特に60代からは我慢なんてもったいないですよ。
最近は携帯電話のアドレス帳も整理しました。1000人以上は登録されていたけど、連絡するのなんてせいぜい10人から20人くらいでしょう。アドレス帳がスマホの中でどのくらいの容量を占めるのかは分かりませんが、「不要なモノは少しでも減らそう」と思って整理しました。
洋服を整理するにあたって、思い出深いモノは色々な方にお渡ししようと思っています。まさに今、ある女性演歌歌手の方にドレスや靴などを差し上げるところです。彼女は私とほとんど同じ背格好で靴のサイズも同じだし、ステージで着た時に、「そのドレス素敵だね」って声をかけられたら「これはピーターさんにもらったんです」と言ってくれるかもしれない。それはそれでカッコイイじゃないですか。
そんな感じで、不要なものを手放したり誰かに譲ったりしながら、自分を身軽にしていますが、ただ、どうしても「捨てられないもの」もあります。
いつだったか、段ボールにいっぱい入っている写真やなんかを、一気に捨てたことがありました。同じようなカットで何枚もあるのは、一番いい写真を選んでスマホで撮る。そうしてデジタル化することで写真そのものは大量に処分しました。年賀状などもその時に処分したのですけど、黒澤明さんからいただいた手紙だけは捨てずに取ってあります。
黒澤監督の映画『乱』(1985年公開)に出演できたことは、私にとって演者としてのターニングポイントになりました。主演の仲代達矢さんに仕える道化役でしたが、殿にも臆せず意見を言わなければいけない役でした。私は監督から「ピー公」と呼ばれていたのですが、いただいた手紙には、
「ピー公へ 僕にもいろんなことをズケズケ言わなきゃ。まだ借りてきた猫みたいだよ」
といったことが書いてありました。痛いところを突かれていますよね。監督の優しいご指導は忘れられないですし、この手紙だけは生涯大事なものですからね。なんでも捨てれば良いってものではないでしょう。つい先日はキャンピングカーで『乱』の撮影で半年間も滞在した九州の九重高原あたりを回ってきたんですよ。そこで当時お世話になった宿のオーナーご夫婦とも何年かぶりに再会できました。
もういい大人ですから「会いたくなったら会いに行く」でいい。ある程度の距離感を大事にして、モノでも人間関係でも堅苦しいなと感じたら、整理したらいいと私は思うのです。