今年は西城秀樹さん(享年63)デビュー50周年のメモリアルイヤー。同じ時間を過ごした歌手たちは、今も西城さんの曲を歌い、語り継いでいる。そんな歌手たちについてコラムニストで放送作家の山田美保子さんが綴る。
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7日、中野サンプラザで行われた「神野美伽コンサート 2022『さぁ、歌いましょう!』」を観る機会に恵まれた。
約2年半ぶりの東京公演。神野はMC中、何度も「この2年半」という言葉を口にし、コロナによって寸断された人間関係や「まさかの」戦争などについて言及し、平和を強く訴えた。
2年半の間には、自宅にピアニストの小原孝氏を招き、神野が愛用するピアノを使って、「お家de音楽会~神野美伽&小原孝~」なるYouTubeを開設し、頻繁にアップしている
こうした“いいこと”もあれど、2年前には同所で予定されていた公演がコロナで中止に。今年3月には腰椎椎間板ヘルニアによる右足急性麻痺の診断を受けて緊急手術、約2週間、入院。ギプスは先月末に取れたが両足に治療用テープを巻いており、現在も治療、リハビリ中だ。舞台を駆け回ったり、和装ながら両足を開いて踏ん張ったりしながら全身で歌う神野が以前のように歌えるのか否か。会場を埋め尽くしたファンや、これまで楽曲を提供してきた歌謡界の重鎮らが見守るなか、神野は最高のステージを務めあげた。本人はスポーツ紙の取材に「(完全復帰には)程遠い」と答えている。
本当に色々あった2年半。さまざまな想いが彼女に押し寄せ、時折、感極まる場面もあったのだが、客席からもすすり泣きが聞かれたのは、第1部の8曲目に選んだ『めぐり逢い』前後のMCのときだった。
神野美伽が歌い上げた秀樹さんの“遺作”
この曲は、カナダ人のピアニスト、アンドレ・ギャニオンのインストゥルメンタル曲にオリジナルの日本語詞をつけたバラード。2018年5月16日、急性心不全のため天に召された西城秀樹さんの事実上の遺作である。
神野と西城さんは、以前、同じ『芸映プロダクション』に所属していた。『東西ちびっこ歌マネ大賞』優勝をきっかけに、10歳でスカウトされた神野にとって10歳上のお兄さん的存在であり、大スターでもあった西城さんのステージは「何度も行かせていただいた」そう。西城さんのライブの代名詞であるスタヂアムコンサートも『大阪球場』で観ているという。
そんな憧れの西城さんが脳梗塞で倒れ、その後、懸命にリハビリをしている様子を追いかけたテレビ番組を「見た……、見てしまったんです」と言った後、沈黙した神野。「秀樹さんは、もっともっと歌いたかったんだと思います…」「秀樹さん、今年がデビュー50周年なんですよ…」と言い、神野は再び言葉を詰まらせた。
そんな西城さんへの特別な想いをこめて、ピアノの伴奏だけで歌い上げた『めぐり逢い』。間奏でワンフレーズだけ『YOUNG MAN(YMCA)』のメロディが弾かれたときには、私も我慢ができなくなり、泣いてしまった。