世界的に、肥満かどうかは「体重(kg)÷[身長(m)の2乗]」で導き出されるBMIで診断されることが多い。日本肥満学会の基準では、BMI18.5未満が「低体重(やせ)」、18.5以上25未満が「普通」、25以上が「肥満」とされている。
しかし近年では、BMIだけでは肥満度の指標にするには不充分だという見方も登場している。BMIが高いからといって、太っているとは限らない。さらに、太っているからといって、不健康とも限らないという。『いい肥満、悪い肥満』著者で、慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授の伊藤裕さんは「いい肥満なら、むしろ健康長寿の助けになる」と話す。
「ワシントン大学のサミュエル・クライン教授の研究によって、生活習慣病になりやすい“悪い肥満”と、太っていても病気になりにくい“いい肥満”があることが明らかになりました。簡単に言えば、いい肥満の可能性が高いのは、いわゆる洋ナシ型の、皮下脂肪型肥満です。三段腹や下半身太りを気にする女性は多いですが、皮下脂肪によって太っているなら、健康上の心配はそれほどありません。
一方、悪い肥満は、お腹がぽっこり出ているりんご型肥満です。これは多くの場合、内臓脂肪によって太っており、生活習慣病や認知症など、さまざまな健康リスクが高い。
内臓脂肪と皮下脂肪のどちらが多いかが、自分が優秀な脂肪細胞を持っているかどうかの1つの判断基準になる。伊藤さんは、メタボ診断基準に2つ以上該当する人は、ダメな肥満の可能性が高いと話す。具体的には、女性なら「腹囲90cm以上」「収縮期血圧130mmHg以上」「空腹時の血糖値が110mg/dL以上」「中性脂肪が150mg/dL以上」などだ。
「太っていても、お腹の肉を指でつまめるなら、皮下脂肪型の“いい肥満”の可能性が高い。ただし、女性は男性よりも全身に脂肪がつきやすいため、皮下にも脂肪がついた内臓脂肪型肥満のケースもあります。別掲のチェックリストに当てはまらないからといって、油断は禁物です」(伊藤さん・以下同)
正確には医療機関で血液検査やCT検査を受けるほかない。だが、急に体重が5kg以上増えたり、急に血圧が120mmHgから140mmHgに上がったなどの変化があれば、ダメな肥満を疑うべきだ。