個人視聴率三冠を続ける日本テレビ。テレビ界では“王者”ともいえる存在だが、その日テレがバラエティの番組制作で意外な戦略を見せている。それは“テレ東化”である。いったいどういうことなのか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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11日夜、土曜ゴールデンタイムの2時間特番『1日1便 乗ってきました』(日本テレビ系)が放送されます。
この番組は「1日に1便しかない電車、バス、船、飛行機の終点には何があるのか。ディレクターが終着点の“秘境”に長期滞在し、汗かき取材。するとそこには……ネットで検索しても出てこない絶景!グルメ!愉快な人たちが!」というコンセプトで放送されるロケバラエティ。
日本テレビと言えばこれまで、多くの芸能人を集めたスタジオ収録の番組や、芸能人の大がかりなロケ番組を中心に、視聴率トップの座に君臨し続けてきました。しかし、このところ『1日1便 乗ってきました』のようなディレクターなどの一般人がメインの“足を使った”番組が増えはじめています。
たとえば、同じ土曜ゴールデンでは、先月7日に無人島や廃鉱山で各種専門家たちがゼロからお金を生み出す『錬金バトル KASEGE』、3月19日にあるジャンルを極めた人が実際に行っている旅に同行する『推し匠さんの幻ツアー』を放送。どちらも芸能人ではなく一般人をベースに企画された足を使うタイプのロケバラエティです。
また、今春に大幅なリニューアルを施した土曜19時台の『嗚呼!!みんなのどうぶつ園』も、動物以上に愛おしく思える動物好きな人を“ガチ恋さん”と呼んでスポットを当て、全国各地でロケを敢行しています。
さらに現在放送中の『沸騰ワード10』『THE突破ファイル』『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』『超無敵クラス』『一撃解明バラエティ ひと目でわかる!!』を輩出するなど、新番組の大半を輩出する日曜午後の特番枠『サンバリュ』の傾向もおおむね同様。一般人がベースの企画が目立つほか、芸能人メインの企画でも足を使うタイプのロケバラエティが多くを占めています。
テコ入れが求められる5つの背景
ゴールデンタイムの番組や新番組のトライアル枠にその傾向が出ている以上、日本テレビが足を使うタイプのロケバラエティを重視しているのは間違いないでしょう。
その足を使うタイプのロケバラエティは、近年テレビ東京の代名詞となっているコンセプトの1つ。『家、ついて行ってイイですか?』や『YOUは何しに日本へ?』から、新番組の『タクシー運転手さん一番うまい店に連れてって!』まで、ディレクターたちが足を使うタイプのロケバラエティで視聴者の支持を獲得しています。
また、『ポツンと一軒家』を手がける大阪の朝日放送や、『ヒューマングルメンタリー オモウマイ店』を手がける名古屋の中京テレビなど、キー局以外が全国放送の番組を制作するときの手法とも言えます。
ではなぜキー局のトップに君臨する日本テレビが、テレビ東京や大阪・名古屋のテレビ局と似たコンセプトのロケバラエティを選んで放送しているのでしょうか。
これまで日本テレビは、「ドラマを22時以降に集め、1時間のバラエティを3~4番組並べる」「安易に特番に頼らず1時間のレギュラー放送を重視する」というバラエティを軸に据えた王者ならではの戦略を採用してきました。
しかし、「PUT(総個人視聴率)が急激に下がっている」「日本テレビのバラエティに“勤続疲労” が見えはじめている」「YouTuberなどに企画を模倣されている」「有名タレントの起用が視聴率につながりにくくなっている」「コロナ禍もあってCM収入維持が難しい」などの背景から、何らかのテコ入れが求められる状況になっています。