異例ずくめの船出だ。元横綱・稀勢の里の二所ノ関親方は6月5日、出身地の茨城で「部屋開き」を行なった。サッカーのピッチに匹敵する1800坪の敷地に新設された部屋は、“常識”を覆す斬新なものとなった。
「稽古土俵が2面あり、屋外にバスケの半面コートもある。米国のスポーツ選手がトレーニングに取り入れていることから設置したそうです」(担当記者)
国技館までの距離も常識外れ。最寄り駅は常磐線・ひたち野うしく駅で、両国まで乗り換え時間も含めて1時間20分かかる。
「さらに異例なのは、部屋開きの写真におかみさんの姿がなかったことです」(協会関係者)
二所ノ関親方は5月場所前に6歳下の女性と結婚していたことが判明。「公表に際しても、“おかみは陰で支え、表に出る必要はないので”と写真提供は固辞された」(前出・担当記者)という。たしかに、部屋開きの集合写真を見ても姿がない。
「実は、部屋開きの場にはおかみさんの姿があった。集合写真に入っているカットもあったが、親方からそうした写真は使わないようにとお達しがあったんです。記者たちも“おかみ隠し”の理由が分からず首を傾げていました」(同前)
当人は「強い横綱・大関を輩出したい」と抱負を語ったが、昇進で協会の使者を迎え入れる際には、力士の両脇に親方とおかみさんが座る。その時はどうなるのだろうか。
興味深い“前例”が北の湖元理事長の妻・とみ子さんだ。37年間にわたり表に出ずに親方を支え続けた。
「北の湖は現役時代に後援者の紹介でとみ子さんと知り合った。披露宴こそ大々的に開かれたが、引退して部屋を興して以降、おかみとしては表に出ずに陰ながら部屋を支えました。ただし、とみ子さんは部屋の力士の勝ち越しを誰よりも喜び、“親方の横で大関や横綱の伝達式の使者を招きたい”と話していた」(ベテラン記者)
結局、北の湖部屋から大関・横綱は誕生しなかった。二所ノ関部屋のおかみさんが表舞台に立つかは、弟子の出世次第なのかもしれない。
※週刊ポスト2022年6月24日号