今夏の参院選に、日本維新の会から全国比例で出馬する作家・猪瀬直樹氏。作家として長く活動する傍ら、道路公団民営化委員、東京都副知事・都知事などを歴任した猪瀬氏が、なぜ今、参議院で国政を目指すのか。猪瀬氏が語る。(写真/山崎力夫)
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戦後、参議院は「良識の府」と呼ばれ、政党によらない議会運営を目指していた時代があります。例えば『路傍の石』で知られる作家の山本有三は、戦後間もない時期に、参議院に「緑風会」という無所属議員の会派を作りました。
山本は参議院文化委員会委員長として、かつての「明治節」などの祝祭日を「文化の日」など国民の休日として作り替える祝日法の制定に深く関わった人です。さらに「新仮名遣い制定」や「国語国字問題」に尽力するなど、主に文化面で日本の戦後復興に大きく寄与しました。
現在は衆議院のコピーのような位置付けになってしまっていますが、参議院には本来の役割があったはず。そして、そうした参議院らしさは、今の日本にやっぱり必要だろうと思うわけです。
以前、こんなことがありました。ある夏、衆議院議員のパーティーに行ったら、2人の政治家が、地元の盆踊りに何回行ったかを話し合っていて、「僕は200回」「いや私は300回だよ」とやっていた。自慢話としてではなく、苦労話としてです。お盆の短い期間に、仮に5分ずつだとしても、盆踊りを200や300も回るのは異常です。
だけど、1人区である小選挙区制ではそうしなければ当選しない。つまり、衆議院議員は毎日が選挙活動・政治闘争ということです。政治家が駅前で演説したり、支持者や団体への挨拶回り、地元で冠婚葬祭に動き回ったりするのはよく見聞きするでしょう。
毎日毎日、選挙活動しているわけだから、政策を考える暇はない。国家のビジョン策定や政策立案は霞ヶ関に任せて、自分は選挙でいっぱいいっぱいになってしまう。当選しても、いつ解散があるかわからず、彼らが使う「常在戦場」の言葉通り、常に戦場で戦っている。