マンホール蓋の劣化状態を写真やレビューで報告する社会貢献型ゲームアプリ「鉄とコンクリートの守り人」が話題だ。今回は、散歩好きとして知られる俳優の岡本信人さん(74)が、ご近所散歩をしながらインフラを守る担い手に挑戦した。
NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で源頼朝に仕える坂東の重鎮、千葉常胤を演じる岡本さんの趣味は、散歩と野草摘み。撮影など仕事で時間がない時を除いてほぼ毎日、自宅近所を8000歩ほどウォーキングし、四季折々の野草を観察しながら、旬のものを摘んで帰って食べているという。そんな岡本さんに、アプリ「鉄とコンクリートの守り人」を使って東京・渋谷区内を“マンホールの守り人”として歩いてもらった。
「わあ、懐かしい! このマンホールの蓋には電電公社のマークが入っているので、民営化前の古いものとわかりますね」
小田急線の代々木上原駅から代々木八幡駅へ向かう途中の住宅街の道で、未投稿のマンホール蓋を見つけた岡本さん。周囲の安全を確認した後、アプリの指示に従ってスマホで撮影して投稿した。しばらく歩くと、今度は蓋の周囲の舗装が陥没したマンホールを発見。レビューで「損傷あり」ボタンをタップして報告した。
アプリ「鉄とコンクリートの守り人」は、日本中のマンホールの蓋を「守り人」(プレイヤー)が協力し合って写真撮影し、損傷状態を投稿することによってインフラの安全を図る社会貢献型位置情報ゲーム。実証実験を経て今春、スマートフォンで楽しめるアプリ版が提供開始され、誰でも街中を歩きながらマンホール情報を集めて楽しめるようになった。開発したのは、市民参画型インフラ情報プラットフォームの構築や運営を手がけるNPO「Whole Earth Foundation」(本社・シンガポール)。開発陣の1人、百瀬開智氏が目的を説明する。
「日常生活を支えるインフラに関心を持つきっかけとなり、一人ひとりにインフラを守る担い手になってほしいとの思いから、日本鋳鉄管株式会社とも提携して開発しました。日本全国には下水道のマンホール蓋だけで約1500万個あります。自治体だけで老朽化や不具合のある蓋を見つけるのは大変ですが、一般の人々がゲームに参加することで情報収集の効率が飛躍的に上がります」
自治体と協力して実証実験イベントも行ない、石川県加賀市では1日半で市内の全8000個、静岡県三島市では2日で全1万3000個の画像収集を完了し、データを自治体に提供。蓋を実際に修理する実績も増えている。