【著者インタビュー】千葉雅也さん/『現代思想入門』/講談社現代新書/999円
【本の内容】
「はじめに」で現代思想を学ぶ「メリット」が具体的に綴られている。《現代思想は、秩序を強化する動きへの警戒心を持ち、秩序からズレるもの、すなわち「差異」に注目する。それが今、人生の多様性を守るために必要だと思うのです》。立命館大学文学部の授業「ヨーロッパ現代思想」をベースにしているという本書は、ツイッターでの出来事など卑近な例も交えながら、まるで講義を聴いているような語り口で進む。デリダ、ドゥルーズ、フーコーらの哲学を学びたい人のほか、生きづらさ、息苦しさを感じている人におすすめの一冊。
本格的なものを欲している読者は実は結構いるはず
デリダ、ドゥルーズ、ラカンといった現代思想の代表的な哲学者の思考術を一般読者にもわかるように紹介する『現代思想入門』が売れている。発売3か月ですでに9万部に達する快挙だ。
「こんな硬いタイトルの本なのに、ここまで注目されて、自分でも驚いています。小説も含めたぼくのコアな読者はもちろんですけど、それ以外の、読者層の広がりを感じますね。ツイッターで自分の本の感想をいつも読むんですけど、教育現場の人や福祉の現場で働く人、ビジネスパーソンなど、いろんな人が自分のフィールドで応用を考えてくださっていてうれしいです」
デリダやドゥルーズ、ラカンにしても、二項対立をくつがえす「脱構築」という概念にしても、難解で、歯が立たない印象がある。それでも、わからないものを何とかわかりたいと学習意欲を持っている読者は、意外にたくさんいるのかもしれないと思わされる、今回のヒットだ。
「もっと俗っぽいものを書かないと興味を持ってもらえない、と出版関係者はよく言いますし、実際に、そういう企画の立て方をしていると思うんです。でも、本格的なものを欲している読者は実は結構いるはずです。本格的な内容を世俗とつなげる書き方も可能で、そういうふうに書けば、きちんと届くんだろうとぼくは思っています」
本のタイトルは「入門」だが、この本がめざしているのは「入門の入門」。できるだけ入りやすい入口を設定し、何かひとつ興味を持てたら、次は何を読めばいいか、丁寧に誘導する構成になっている。
千葉さんがこれまで大学で教えてきた哲学の授業の内容をもとに、学生たちの反応も踏まえて練り上げられているから、とても読みやすい。