臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、BTS(防弾少年団)の活動停止発表で表出したK-POPアイドルというシステムの限界について。
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それは突然の活動休止の発表だった。このままいけば韓国の徴兵制度により、今年の年末までにはグループでの活動を休止せざるを得なくなると思われていた。だが彼らが見せたのは、”K-POPやアイドルのシステム”に対する苦悩だった。
14日、K-POPの超人気グループBTSがグループでの活動を休止し、しばらくソロ活動に専念すると公式YouTubeチャンネル「BANGTANTV」で発表した。10日には9年間の集大成であり、デビュー曲から最新曲まで数多くの楽曲が収録されたアンソロジーアルバム『Proof』を発売したばかりだった。メンバーらはこのアルバムを、BTSの活動の一区切りとしたようだ。
彼らの口から語られた活動休止の理由は、これまでメディアや世論で議論されていた兵役問題だけではなかった。だからこそこのタイミングでの発表だったのだろう。本質的な問題は、多忙すぎる日々や成長する時間がないことだった。メンバーのRMが語った「K-POPやアイドルのシステムの問題点」という言葉は衝撃的だ。システムという言葉が、彼らが今、置かれている状況を明確に言い表している。
K-POPやアイドルはシステムなのだ。一旦システムに組み込まれれば、彼らはそのシステムの中で育てられ、成長していかなければならない。システムには枠組みや道筋がある。自分たちの自由になる範囲は限られてくる。
「システムの問題点は成長するための時間を与えないことだ」とRMは語り、ジミンは「自分たちのアイデンティティーを見つけようとしている」と話した。SUGAは「今は何を伝えばよいのか分からない」という。彼らはそのシステムを良しとせず、今のまま続けるのは無理だと感じていたのだろう。疲れたから休むという曖昧なメッセージではなく、抱えている問題についてはっきり語った彼らを見ると、”意思を持ったアイドル”と呼ばれる意味がよくわかる。