ライフ

遺伝的要因が疑われる7つの「がん」 家族に罹患者がいると発生リスク高まるか

家族にがん罹患者は影響するのか(イメージ)

がんの「家族歴」調査結果とは(イメージ)

 がんは日本人の死因の第1位で「国民病」とも呼ばれる。よく“がん家系”という言葉を耳にするが、がんの発生と遺伝の相関関係は世界中で長年の研究課題とされてきた。そうしたなか、国立がん研究センターが発表した大規模研究の結果が注目を集めている。

 遺伝が原因となるがんは全体の5%程度と例外的だが、「がん家系」という言葉が広く知られている理由として考えられるのが、人間ドックなどでも質問される「家族歴」だ。東京大学大学院特任教授の中川恵一医師(総合放射線腫瘍学)が語る。

「家族にがん歴がある人の発がんリスクが高まるのは、遺伝的側面のほかに、同じ生活環境を共有する面も関係していると考えられます」

 この「家族歴」とがん罹患リスクについても日本人を対象にした研究結果が2019年に発表された。国立がん研究センターなどの研究グループが、全国10地域に住む40~69歳の男女約10万人を対象に、平均17年間にわたり大規模に追跡調査したものだ。

『親子で考える「がん」予習ノート』の著者・一石英一郎医師が解説する。

「研究は、対象者を実の両親、兄弟姉妹のうち、1人でもがんになったことの『ある』グループと『ない』グループに分け、がん罹患リスクを比較しています。さらに、年齢や体格などの属性、喫煙・飲酒などの生活習慣、病歴など10項目を対象者に尋ね、その影響を取り除いて分析。その結果、胃がん、肺がん、肝臓がん、食道がん、膵臓がん、子宮がん、膀胱がんの7つに遺伝的要因が疑われることがわかりました」

 たとえば胃がんは、罹患リスクが1.36倍という結果が出た。

「これは遺伝というよりは、家族で同じ井戸水を飲むなどしたことで、胃がんの原因となるピロリ菌に揃って感染していたことによると考えられます。

 一方、喫煙がリスク要因の肺がんや膀胱がんは、その有無にかかわらず、家族歴がある人の罹患リスクがそれぞれ1.51倍、6.06倍になりました。さらに、すべての部位を合わせた『全がん』では罹患リスクは1.11倍です。不安があれば日頃から予防に努めることはもちろんのこと、早めの検診や医療機関への相談をするとよいでしょう」(同前)

 がんと遺伝の研究は発展途上だが、病に対して万全の備えが求められる。

※週刊ポスト2022年7月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト