逆転優勝を目指す巨人だが、状況は厳しいとする指摘が聞こえてくる。交流戦で8勝10敗と負け越すと、リーグ戦再開で最初のカードとなった中日戦も1勝2敗と負け越し。交流戦前に首位ヤクルトとはわずか1ゲーム差だったが、9ゲーム差と大きく水をあけられた。9回のリーグ優勝の経験を誇る名将・原辰徳監督だが、試合中に険しい表情を見せる場面も多い──。スポーツ紙の遊軍記者はこう分析する。
「ペナントレースは半分以上残っているので、数字上ではもちろん逆転の可能性がありますが、ヤクルトと巨人を比較すると大きな差を感じてしまう。特に救援陣ですね。ヤクルトは高津臣吾監督が選手のコンディションを重視しながら強力な救援陣を作り上げたのとは対照的に、巨人はセットアッパーの鍬原拓也や畠世周が登板過多で直球の威力が消えてしまい、コマ不足で崩壊状態になっている。
今までの巨人は修羅場を潜り抜けてきたベテラン選手たちの経験値が大きなアドバンテージになっていましたが、ヤクルトが昨年リーグ優勝、日本一を達成したことで精神的優位に立てなくなった。気になるのはチーム全体を包み込む閉塞感です。選手たちに活気がなく、ベンチの顔色を窺ってプレーしているようにも見える。原監督は名将ですし、その采配力で白星を積み重ねてきましたが、長期政権で組織としてマンネリ化しているようにも感じます」
原監督が初めて監督に就任したのは、20年前の2002年にさかのぼる。前任の長嶋茂雄監督から継承するといきなり日本一に輝く。翌年に3位に終わると監督を辞任したが、2006年から復帰。「第二次政権」の10年間で6度のリーグ優勝、2度の日本一を飾り、名監督として評価を高める。2019年からスタートした「第三次政権」は2年連続リーグ優勝と好調だったが、昨年は3位に沈む。しかし、手腕を評価した球団はオフに新たに3年契約を結んだ。今季監督通算16年目の63歳は勝負師として采配を振るう。5月24日の楽天戦で白星を挙げ、星野仙一氏と並ぶ歴代10位タイの監督通算1181勝目に到達した。紛れもない名将の経歴だ。