治療は対症療法となります。効果が見込まれる抗ウイルス薬がありますが、日本国内では流通していません。

 天然痘の種痘ワクチンは、サル痘にも予防効果があります。天然痘が根絶に向かったことから、現在の日本では接種されていませんが、生物兵器のテロ対策として、国内で生産、備蓄されています。いざとなればそのワクチンが転用して使われるのでしょう。欧米各国もサル痘患者が1000人を超える中、急遽、この種痘ワクチンの確保や接種体制の整備に乗り出しています。

 過去には、アフリカからアメリカにペットとして輸入された小動物を通じてサル痘ウイルスがプレーリードッグに感染、プレーリードッグからヒトに感染してサル痘になったことがありました。検疫は渡航者だけではなく、動物や食料品の輸入などでも感染症の防波堤として大きな役割を果たしています。人獣共通感染症はペットからヒトに感染することもあるので、動物検疫の重要性を痛感しますね。感染症の立場からも動物の密輸はもってのほかなのです。

【プロフィール】
岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所などを経て、現在は白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。

イラスト/斉藤ヨーコ

※週刊ポスト2022年7月1日号

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