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インティマシー・コーディネーターが抱える課題 “日本特有の空気感”をどう変えるか

世界に広がった「#Me Too」

世界では映画プロデューサーのワインスタイン氏による性暴力問題以後「#Me Too」運動も広がったが、日本も変わるか(写真/AFLO)

 今年、映像業界で大きな騒動となったのが、著名な映画人による性暴力事件だ。3月には映画『蜜月』の榊英雄監督(52才)から、「性行為を強要された」と訴える女性4人の告発記事が週刊誌に掲載された。榊監督は報道の一部を認め、謝罪している。

 こうした流れを受けて3月18日、是枝裕和監督(60才)ら6人による『映画監督有志の会』が、連名で「映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します」との声明を発表した。さらに4月には、日本映画製作者連盟に、ハラスメント防止に向けての提言書を提出している。

 また、映画やドラマの撮影現場に第三者的立場として参加し、制作と俳優の間に立って、キスシーンやベッドシーンなど、性的なシーンの撮影を調整する「インティマシー・コーディネーター」という職業が誕生。日本の映画業界が大きな一歩を踏み出したかに見えるが、実際は違う。率先して業界を変えていくべき大手映画会社から根本的にルールを変えるような動きは、いまのところほとんど見られない。実際、騒動以後、日本初のインティマシー・コーディネーターの西山ももこさん(42才)に映画会社から直接、新規のコーディネートの依頼はきていないという。

「インティマシー・コーディネーターを雇うのはプロデューサー。つまり、制作側の人間です。実際に私が入った現場ではこの業界を変えようと志のある人ばかりで、好意的に受け入れてくれていますが、まだ広く受け入れられていない。私たちが現場に入ることで、撮影しづらくなると思う人がいるのは事実です」

 インティマシー・コーディネーターの導入が増えたアメリカでも、課題は残っている。アメリカでインティマシー・コーディネーターとして活動するアッシュ・アンダーソンさんは言う。

「インティマシー・コーディネーターの導入は、法的に義務付けられていません。平たく言うと、現場で意見を言っても制作側には耳を傾ける義務がないし、仕事を妨害されることもある。

 いまはNetflixなどの動画配信サービスが全盛期を迎え、かつてないスピードで多くの作品が撮影されています。今後、俳優はもちろんのこと、私たちスタッフを含めた人材も守っていかなければなりません」(アンダーソンさん)

 西山さんが仕事を始めて1年半。理想と現実のはざまで悩み、葛藤し続けている。

「ある俳優さんから“コーディネーターが入っても、やりたくないことを、やらなくていいというわけではないんだね”と言われたことがあり、ショックを受けました。本来は本人が“イエス”と言えば、同意があったと考えていいのですが、本心では嫌がっている場合もあります。“もっと大きな声で意見すべきだったのか”“本当にあれでよかったのか”と毎回、正しい答えを探しています」(西山さん・以下同)

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