国際情報

プーチン氏、軍事作戦の次は「食糧」を脅しの材料に 日本は“兵糧攻め”の危機

(共同通信社)

プーチン氏が「食糧」を脅しに(共同通信社)

 ロシア軍の苦戦が伝えられ、戦闘の終結はそう遠くないかもしれない。だが、世界は“急所”をすでにプーチン氏に握られてしまった。ロシア軍はウクライナの“玄関口”の港町に狙いを定め、次々に海上を封鎖している。世界に「大飢饉」が迫っている──。

 アメリカや中国などに続く、世界5位の軍事費をかけるロシアは、ウクライナと比べると圧倒的な戦力を持つ。当初は短期間での占領を目論んでいたが、ウクライナが国を挙げて必死の抵抗を続けたうえに、欧米各国からも強力な支援がなされて戦闘は長期化。欧州の研究機関の試算によると、ロシアの戦費は、人的被害の影響なども含めて1日あたり2兆5000億円を超えるとされる。

 莫大な戦費と西側諸国から経済制裁により、ロシア経済は大混乱しており、軍事行動は長くは続けられないと見られているが、仮に停戦したとしても、ロシアは“もうひとつの戦争”を続けることになるという。プーチン大統領研究の第一人者で、ロシア政府の入国禁止者リストにも載った筑波大学名誉教授の中村逸郎さんはいう。

「軍事的な戦争で勝利を収められなかったプーチン氏は、欧米、日本を含めた世界を相手にして『経済戦争』を続けるでしょう。その1つは、天然ガスを筆頭にしたエネルギー戦争です。ヨーロッパ各国はロシア産の天然ガスに大きく依存しており、供給のストップといった戦略が考えられる。中東などほかのエネルギー産出国への切り替えもできないわけではありませんが、すぐには難しいので、世界で混乱が起きるでしょう」

 さらにプーチン氏は強力なカードを握っている。それは小麦などの穀物に代表される「食糧」だ。ウクライナは輸出量世界5位の小麦大国だ。さらにとうもろこしやひまわり油などの生産も盛んで、「世界の穀倉地帯」とも呼ばれている。

 ところが、現在は収穫された小麦が輸出できない状態に陥っている。ロシア軍がウクライナの黒海沿岸の港を制圧したり、港の周辺に機雷(水中の設置爆弾)を敷設したりしたほか、武力で輸出用の船舶を威嚇。港の倉庫には、小麦などが大量に留め置かれているという。そのため、ウクライナ国内にはあり余る食糧がある一方、小麦は世界的な供給不足に見舞われ、価格が高騰しているのだ。

 さらに、小麦輸出量世界1位を誇るのは、ほかでもないロシアだ。すでに、西側諸国の経済制裁への対抗措置で、ロシアは小麦の「売り渋り」という戦略に出ている。しわ寄せを真っ先に受けるのは、肥沃な土地を持たない発展途上国だ。ロシア・ウクライナ両国からの小麦の輸入割合が30%を超える国が、中東、アフリカを中心に約50か国もある。東京大学大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘さんが説明する。

関連記事

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト