臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、『プレバト!!』(MBS系)の人気コーナー「才能査定ランキング」で著名人の出演者による俳句を容赦なく添削している俳人でエッセイストの夏井いつきさん(65才)が炎上するどころか人気者であり続けていることについて。
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夏井先生の辛口査定を見て、俳句のイメージがガラリと変わった人は多いだろう。実は私もその口だ。俳句といえば小林一茶の有名な句を思い浮かべ、隠居した高齢者の高尚な趣味のひとつで、古くさく堅苦しく、動きのないつまらないものというイメージだった。それが今や俳句といえば俳人の夏井いつき先生、夏井先生といえば『プレバト!!』で、俳句は面白いもの、新鮮でダイナミックなもの、どこまでも想像を膨らませていける楽しいものになったのだ。
『プレバト!!』の人気は高い。そしてその人気を長きに渡り引っ張っている夏井先生は、和服姿で飾ることなく、見るからに腹が座った印象で、どんな芸能人にも容赦なくバッサバッサと添削し、歯に衣着せぬキレのある批評をする。それを見ていて小気味いいと評判になるのは、俳句に対する彼女の姿勢がぶれないからだろう。
夏井先生に忖度は感じられない。多少の好き嫌いはあるようだが、俳句の前では誰もが等しく、真っ向勝負。「永世名人」の梅沢富美男さんを”おっちゃん”と呼び、自信満々に披露した句に事もなげに赤字を入れ、迷うことなく切り捨てる。”このクソババア”と言われても、ひるむどころか、逆にやり込める。そう言われるだけの理由がその句にはあり、そう言うだけの理由が夏井先生にあるとはっきりわかるので、彼女の辛辣な物言いが逆に笑いを誘うのだ。彼女の辛口査定には、そう言うだけの理由が視聴者にきちんと見えている。