歳を重ねるほどに衰えを感じやすい「目」は、体の異変の兆候を様々なかたちで知らせてくれる部位でもある。「疲れているだけだから」とやり過ごしていると、そこには重大な病気が潜んでいることも──。
「車の運転中に突然、左目の左端から右に向かってカーテンがかかるようにサーッと目の前が真っ暗になりました」
『タクシードライバーぐるぐる日記』(三五館シンシャ)の著者である内田正治さん(70)は、2016年9月、都内でのタクシー乗務中に突然目の異変を感じた。
「最初はカラスか何かが目の前を通ったのかと思ったのですが、そのまま視界が真っ暗になっちゃった。幸い空車のタイミングだったので、これはおかしいと車を脇に止めてしばらく目を閉じました。
4~5分経って目を開けると元に戻っていたんですが、今までにない症状だったのですぐに眼科へ。医者からは『一過性黒内障』と診断され、大学病院での精密検査を勧められました。聞いたことのない病名でしたし、お客を乗せて高速を運転中に目の前が真っ暗になったら……と想像すると怖くなり、仕事を引退する決意が固まりました」(内田氏)
歳を重ねるにつれて発症するリスクが高くなる目の疾患として緑内障や白内障がよく知られるが、「黒内障」とはどのような病気なのだろうか。
「黒内障は放置すると死につながることさえある怖ろしい病です」──そう語るのは、二本松眼科病院の眼科専門医である平松類医師だ。
黒内障を発症すると、多くのケースで片方の目に黒い幕が下りたかのごとく視界が真っ暗になる。
中には無数の黒い点が出現して視野の一部が欠けたり、目の奥で爆発があったような感覚で光が走った後に、モヤが出現して視野が遮られていくケースもあるという。