肝臓は肝硬変などを起こしていても自覚症状が出にくいため、「沈黙の臓器」と呼ばれる。黄疸など体に明らかな異変が起きた時には、すでに手遅れというケースも少なくない。同じく「目」も症状が出にくいため、命に関わる重大な疾患を見逃しやすいと専門家は警鐘を鳴らす。
二本松眼科病院の眼科専門医である平松類医師は「目は体の様々なSOSを発信しています。中には放置すると死に至る病も。いかに早く読み取れるかが大切です」という。見逃してはいけない「目からの不調のサイン」を平松医師が解説する。
平松医師がまず挙げるのが、「視野欠損」だ。目の端や真ん中などの視界が欠けるこの症状は、脳の疾患の疑いもあるという。
「日本人の失明原因のトップである緑内障は、進行すると視野が欠けてきます。ただし、多くの人が末期近くの視野が半分以上欠けた状態になるまで気が付かない。なぜかというと、人間は片目がおかしくてももう片方の目で補ったり脳が衰えた視覚を補完するので、視野が欠けていっても気付かない人が少なくないのです。緑内障は末期になってしまうと治療が難しくなりますが、早期に発見できれば失明を防げます。緑内障は大抵の場合、ゆっくり進行するので月に1度のペースで片目を閉じて周りを見て、視野に変化がないか確認することが望ましいといえます」(平松医師)
一方、脳の疾患が原因で視野が欠ける場合は注意が必要だ。脳梗塞など死に至る可能性のある重大な疾患が隠れている場合もある。
「医者の立場からいうと目は脳の一部の臓器です。目と脳は神経や血管が繋がっており、脳から出血している場合は目が圧迫されるといった具合に、目は脳の不調を反映します。もし朝起きた時に目の端が見えないなど、急に視野が欠けるようなことがあれば注意しましょう。脳梗塞や脳出血、下垂体腺腫(脳腫瘍)といった脳の血管が関係する疾患の疑いがあるので精密検査を勧めます」(平松医師)