6月25日、ヤクルト対巨人戦のフジテレビでの中継が物議を醸している。14時30分に放送を開始したものの、解説者の工藤公康と山本昌の野球人生を振り返ったり、ゲストの元SMAP中居正広にコメントを求めたりして、22分間も肝心の試合を映さなかったのだ。ようやく本来の“中継”が始まった時には、既に巨人が6対0と大量リードしていた。
視聴者からは“余計な演出”と不満の声も多数出ているが、なぜフジテレビはこうした演出をしたのか。キー局関係者はこう読む。
「野球中継はもう15年以上前から視聴率を取れない上に、今年になってデーゲーム中継の数字がものすごく悪いんですよ。だから、焦りがあったんでしょう。開幕直後の視聴率はそんなことなかったんですけどね。巨人対中日の開幕第2戦(3月26日)は5.5%、第3戦(3月27日)は4.8%でした(視聴率は世帯。ビデオリサーチ調べ、関東地区。以下同)。
しかし、同じカードの5月14日土曜は3.4%、15日日曜は2.6%まで下がった。“伝統の一戦”である巨人対阪神でも4月30日、5月1日がともに4.0%でした。世帯で2%台はあまりに低過ぎる。そういう数字を知っているので、フジテレビは『何かを変えなければ』と試合以外の演出に走ったのでしょう。フジに限らず、日本テレビも昨年『配球王 サバイバルナイター』などをして物議を醸しました」
とはいえ昨年までの中継では、こうした演出はそこまで多くはなかった。しかし、視聴率低下によって今年はそうもいかなくなったようだ。日本テレビは6月5日(日曜)の巨人対ロッテ戦の中継で、球速や打球の角度などを示す『トラックマン』のデータをリアルタイムで紹介したが、必要以上に伝え過ぎたのか、ネット上では多数の視聴者から『何度も何度もうるさい』と指摘されていた。
「地上波で野球中継をそのまま流しても正直、数字が取れないんです。そのため、各局がいろいろな工夫をしている。しかし、ファンからは『普通に試合を見せてくれ』と抗議の声が上がる。彼らはおそらくCSやネットの中継にシフトしていくことでしょう。野球に興味ない人は元々見ないから、結局スタッフが工夫して新しい何かをしてプラスになることって、ほとんどない。そうわかっているけど、数字が上がらない番組を何の工夫もせずに放送するわけにもいかない。スポーツ班は、すごいジレンマがあると思います」