ここ数年、コロナ禍で旅に出たい気持ちにがまんを強いられたが、今夏は感染状況もやや沈静化。久々に旅に出かけられそうだ。特に今年は日本の鉄道が開業150周年を迎え、電車旅に注目が集まっている。そこで、日本の発展の原動力となった鉄道旅の魅力を“懐かしの写真”とともに振り返る。
【夜行列車】夜の車窓から見える灯りが旅人を感傷的にさせた
「終戦の日も鉄道は動いていたそうですが、これが戦後復興の原動力になりました。GHQ統治下でできた進駐軍専用列車が鉄道の速達化につながり、昭和20年代半ばには特急や急行が復活。私自身、父の郷里が熊本の天草で、東京〜長崎間を走る寝台特急の『さちかぜ』や『さくら』に何度も乗ったことが原体験になりました」と言うのは、鉄道ジャーナリストの松本典久さん。
漫画で鉄道の魅力を伝え続けているやすこーんさんも、「14年前に初乗車した寝台特急『はやぶさ・富士』での体験が新鮮でした」と言う。
また、文筆家の蜂谷あす美さんは、寝台列車の思い出について、「いつも電車の中では本を読むのに、高校時代に福井から青森まで寝台特急『日本海』に乗ったときは、まったく読まずに家々の灯りを眺めていたのを覚えています」と話す。
夜汽車の旅には、人を魅了する何かがあるのだろう。
【新婚旅行】熱海や宮崎が賑わった! 鉄道ハネムーンの時代
幕末に坂本龍馬と妻・おりょうが九州の霧島に出かけたのが日本のハネムーンの始まりとされているが、鉄道事情で新婚旅行も様変わりする。
戦後まもなくは地元近辺に出かけていたが、昭和30年代後半になると鉄道でのハネムーンが人気になっていく。
「昭和30年代、高度成長期に入ると、熱海や宮崎が新婚旅行先として大人気になりました。私の両親も新婚旅行で熱海に行っています。
なぜここが人気を得たかというと、熱海は戦前から人気の場所。宮崎は昭和42年から京都〜宮崎間に臨時急行『ことぶき号』が登場し、関西はもちろん、東京からも新幹線の乗り継ぎで旅行しやすくなったためです」(松本さん)
当時、新婚夫婦だけが購入できた「ことぶき周遊券」には、旅立つふたりの見送り用に「ことぶき入場券」が10枚ついていたという。
また昭和43年には、京都・大阪方面と宮崎をつなぐ寝台特急「彗星」の運行が始まり、宮崎を目指す新婚夫婦が急増。日南海岸がハネムーンの聖地となっていたのを懐かしく思う人も多いだろう。