国内

田中角栄派閥、選挙運動で戦闘集団として威力を発揮 総裁選では『ローラー作戦』も

田中派は選挙でも躍動した(時事通信フォト)

田中派は選挙でも躍動した(時事通信フォト)

 1972年、田中角栄は佐藤派から81人の議員を引き連れて木曜クラブ、いわゆる「田中派」を結成した。大派閥をバックに直後の自民党総裁選に勝利し、総理大臣となった。あれから50年──。すっかり熱気の失せた参院選を前に、かつて政界最強を誇った田中軍団の輝きを振り返る。【全4回の第3回。第1回から読む

 * * *
 田中派が戦闘集団としての威力を最大限に発揮したのが選挙であった。若手時代、木曜クラブの事務局員だった衆院議員の石破茂氏が語る。

「私が職員になってすぐ参議院選挙がありました。その時は北海道から沖縄まで自民党の候補者の名前を書き、田中派の候補者を赤丸で囲みました。続いて田中派の候補者が出る地域の地方新聞を一日遅れで入手して選挙情報をチェックし、各選挙区の情勢分析をしました。併せて日本列島の白地図に選挙区ごとの区割りを書き込み、田中派が立候補する地域を赤く塗った。『まだ赤くないところも赤くして、日本全国を田中派にする』との意気込みでした」

 選挙前は、誰にいつ応援に来てほしいかを候補者に聞き、応援議員を割り振った。

「もちろん一番人気は田中角栄先生ですが、すべての選挙区を回るわけにはいきません。地味な応援弁士を割り当てられた陣営から不満が出た時、なだめるのもわれわれ職員の仕事でした」(石破氏)

 角栄の娘婿である田中直紀氏が初めて選挙に出た時、当選確実だったため有名な議員は別の候補の応援に回った。すると、「誰がこんなの決めたの! ウチのパパを誰だと思っているの!」との抗議電話が事務所に寄せられた。

「直紀さんの奥さんの田中真紀子さんでした。『直紀先生は十分お強いので、私が当確ギリギリの候補者のところに変更しました』と伝えると、『お前は誰!』と叱られました(苦笑)」(同前)

 選挙戦では田中派の威光をバックに団体票を徹底的に発掘した。

 角栄の秘書として政界入りした衆院議員の中村喜四郎・元建設相が明かす。

「中選挙区は党ではなく、派閥が自前の候補者を擁立するため、脆弱な派閥事務所では候補者がふるいにかけられます。田中派の事務所は完璧に整備され、あと一押しすれば勝てる候補にいち早くテコ入れして影響力を持つ人を送り、業界団体を味方につけていった。重厚な協力体制は盤石で、候補者はみんな『田中先生のところに行きたい』と漏らしていました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン