「うまい、やすい、はやい。」を掲げ、ビジネスマンのファストフードの1つに「牛丼」を定着させた吉野家が、使用しているコメを100%国産米に切り替えたことがわかった。それまで一部にアメリカ・カリフォルニア産のコメを使用していたが、昨年から国産米に切り替え、4月までに全店舗でそれが完了したという。
食品業界に詳しいジャーナリストが語る。
「吉野家のコメは、しばしば使用米やそのブレンド比率を変えていました。煮込んだ牛肉を乗せることもあって『さっぱり系』が前提のため、外国産米をブレンドしても対応できていた」
牛丼の並盛は340グラム(規定)。そのうちご飯は約250グラムを占める。「多い時で米国産米を1割ほど国産米にブレンドして使用していた」(前出・ジャーナリスト)という。直近でブレンドが始まったのは2017年の春から。かつても2012年~2014年に使用していた期間があった。
今回、使用が終了したコメ「カルローズ」はカリフォルニア産の定番米。長さがある中粒種で、米国の業界団体であるUSAライス連合会のサイトによれば「軽い食感とアルデンテとも言える歯ごたえが特長」だという。農水省が入札を実施するMA米(ミニマム・アクセス米)を構成するコメの1つでもある。
吉野家の切り替えの背景には、カルローズと国産米がほぼ同価格になったことがあると言えるだろう。2021年産のアメリカ産米はカリフォルニア州の干ばつで生産量が約2割減ったほか、直近の円安・ドル高、さらに輸送費の高騰に拍車がかかり、調達価格が上昇し続けている。
カルローズの値段(農水省の売買同時契約輸入米の売渡価格。2021年産米)は昨年秋から1キログラム当たり200円を超え、昨年9月入札の売渡価格は240円、今年3月入札では222円だった。一方、国産米の価格(農水省発表の相対取引価格。2021年産米)は1キログラム当たり212円(5月度)。2020年頃まではカルローズが100円台前半で国産米が300円弱だったため輸入米使用はコスト面でメリットがあったが、現在はそれが吹き飛んでしまったといえる。