ペナントレースが折り返しを迎えたばかりにもかかわらず、ヤクルトの連覇が確実視されるような状況になっている。7月2日のDeNA戦で延長10回にサヨナラ勝ちを決め、2リーグ制以降史上最速となる優勝マジック53が点灯。翌7月3日には14カード連続勝ち越しと球団記録を更新し、2位の巨人を13.5ゲーム差で突き放している。この独走に球界内ではクライマックスシリーズ(CS)の存在意義を問う声まであがっている。
スポーツ紙遊軍記者は、「巨人はメークドラマやメークレジェンドなど大逆転でリーグ制覇を飾った事例がありますが、今年は厳しいでしょう。投手陣が不安定で、この戦いぶりだとCS圏内の3位に入れるかも微妙な状況です。広島、阪神もミスが多く、ヤクルトの独走を止めるのは難しいでしょう」と分析した上で、こう続けた。
「このような展開になると、CSが果たして必要なのかという議論にもなる。143試合を戦うペナントレースの重みを考えると、シーズン1位のチームが2位以下に10ゲーム差以上つけたらCSは必要ないように感じます」
CSの前身のプレーオフ制度がパ・リーグで導入されたのは2004年。近鉄とオリックスの合併問題に端を発した「球界再編問題」で揺れた年だった。当時のパ・リーグは観客動員数で伸び悩んでいた球団が多く、リーグ優勝が早々と決まると消化試合が増えてさらに集客できなくなるのが悩みの種だった。消化試合を減らし、リーグ全体を盛り上げようという狙いでプレーオフの実施に踏み切った。
この制度で、短期決戦を勝ち切れずに頂点に届かなかったのがダイエー(現ソフトバンク)だった。2004年はシーズン1位で通過したが、第2ステージで西武に敗れて2位に。親会社がダイエーからソフトバンクに代わった翌2005年もシーズンで89勝をあげ、貯金44(136試合制)と圧倒的な強さを誇ったが、ボビー・バレンタイン監督率いるロッテに第2ステージで敗れた。
当時はシーズン2位と3位の球団が第1ステージで対戦し、勝ち上がった球団がシーズン1位の球団と5戦で戦う方式だったが、「ペナントレースを軽視している」と疑問の声が高まり、2006年から「1位の球団は無条件でプレーオフ1勝分のアドバンテージを得る」とルールが変更された。
2007年からセ・リーグでも開催することが決まり、「クライマックスシリーズ」という名称に。日本シリーズ出場をかけた短期決戦で数々の名勝負が繰り広げられたが、中日の監督で黄金時代を築いた野球解説者の落合博満氏は「CS反対論者」だった。2018年12月に放送されたCBCラジオの『ドラ魂KING』に出演した際、「いまだに(CS開催に)大反対ですよ」と強調した上で、「なんで6球団しかないのに3つで争わないといけないの? なんで2分の1の確率なの?」と現行の方式に疑問を呈した。
元DeNA監督の中畑清氏も7月3日の『サンデーモーニング』(TBS系)でCSについて、「ただあの制度があるっていうのは、ちょっと問題になってきましたね。それでもチャンスがあるシステムに問題ありっていうのもあると思います」と制度の歪さを指摘している。