「気象はバランス」とよくいわれる。今夏はいきなりの記録的猛暑で大地が急激に「加熱」された。ならば次に起こるのは急激な「冷却」、すなわち、記録的降雨だ。危機が迫っている。大地の熱を洗い流す濁流に、いますぐ備えるべきだ──。
観測史上最短で梅雨が明け、7月に入る前からギラギラと照りつける太陽に、めまいを覚えた人も多いはずだ。
「梅雨に入ったらエアコンを買い替えようと思っていたのに、梅雨はアッという間に終了。急いで家電量販店に駆け込みましたが、コロナ禍の部品不足もあって、エアコンは納品まで1か月待ちだそうで……。夏が終わるまでに、干からびてしまいそうです」(埼玉県在住の50代主婦)
6月下旬ですでに40℃を記録。このままだと、8月に入ったら連日40℃超えで、「史上最悪の酷暑」がやってくるに違いない──日本中の人がそう深く心配するのも無理もないほどの暑さだった。
ところがその矢先の7月5日、台風4号が九州・長崎に上陸。列島全体で大気が不安定になり、台風からは遠く離れた北海道や青森県でも「記録的短時間大雨情報」が発表され、局地的に猛烈な雨が降った。猛暑から一転の豪雨。いったい何が起きているのか。気象予報士の森田正光さんが指摘する。
「夏の夕立をイメージすれはわかりやすいはずです。昼間が暑ければ暑いほど、夕立は激しくなりますよね。大地は温められすぎると、その熱が上空に上がっていって積乱雲を作り、大雨を降らせて、大地は冷やされます。
どんなに猛暑の年でも、冷夏の年でも、年間トータルにすると『降水量』というのはほぼ一定であることが知られています。今年は“記録的な空梅雨”で、全然雨が降らなかった。つまり、バランスを取るように、今年の夏のどこかで“記録的な大雨”が降ることが予想されるのです」
梅雨明けからの記録的猛暑は、これから訪れる大豪雨の前触れと言えるのだ。暑さはクーラー付きの室内でしのげたとしても、豪雨は洪水や土砂崩れなどの大災害を招きかねない。
「気象状況は2週間くらいが1つの周期です。6月下旬の猛暑から、7月上旬の台風4号の通過までが1つのサイクルと考えると、7月中旬にまた暑さが来て、7月下旬に大雨が降りやすくなる。次に、8月上旬に再び猛暑のピークが来て、お盆あたりにまた豪雨が襲ってくる。暑ければ暑いほど、その後に降る雨は激しくなるものなのです。そして9月に入れば、今年は大きな台風に警戒が必要でしょう」(森田さん)
死者263人「西日本豪雨」の再来
気象の分野には「類似年」という考え方があるという。