参院選を乗り切れば、次の参院選が行なわれる2025年の夏まで、選挙を心配せずに国政の課題に取り組むことができる岸田文雄・首相。しかし、官邸関係者から「総理は年内解散も視野に入れて総選挙スケジュールを練り始めた」という話が聞こえてきた。自民党総裁を2期6年やり遂げたいと考えている岸田首相は、総裁選前に解散・総選挙に打って勝利し、求心力を高め、自民党総裁の座を固めたいと目論んでいるというのだ。
「年内解散」という岸田首相の選挙戦略には、その区割り変更問題が密接に絡んでいる。
次の総選挙は、「一票の格差」是正のために大都市の衆院定数を増やし、地方の定数を減らす「10増10減」による新区割りで行なわれることが想定されている。
安倍晋三・元首相と林芳正・外相、岸防衛相ら大物議員がひしめく山口県や二階俊博・元幹事長の地元・和歌山県など「保守王国」の定数が減らされるのをはじめ、25都道府県、140選挙区に影響が及ぶ。
岸田政権は今年秋の臨時国会で区割り法案を成立させ、1か月の周知期間を置いて施行される見込みだ。しかし、この法案審議が一筋縄ではいきそうにない。
細田博之・衆院議長が10増10減を「地方いじめ」と批判するなど、肝心の自民党内に批判が強いためだ。地方選出の議員だけでなく、都市部の議員も“国替え”(選挙区変更)を迫られるため、自民党の公認調整が難航することは間違いない。
さる6月18日には安倍氏、麻生太郎・副総裁、茂木敏充・幹事長が会談し、区割り変更について「党内で十分に議論する必要がある」という認識で一致したと報じられた。
岸田首相にとって公認調整は党内の大きな火種になりかねない。政治ジャーナリストの藤本順一氏が語る。
「岸田首相が公認調整、議員の国替えに手をつけると、党内の恨みを買うのは避けられない。一歩間違えば政局に直結する。法案成立も簡単ではないでしょう。そうであれば、いっそ区割り案の成立前に解散・総選挙を打つ。現在の選挙区割りのまま選挙になるから、党内から異論は出ない。面倒な公認調整は選挙後に、改めて4年の衆院任期を得てからやればいい」