国内

安倍晋三氏、政治への道を歩み始めた日 人目をはばからずポロポロと涙

1993年8月、初当選した当時の故・安倍晋三元首相(写真/時事通信フォト)

1993年8月、初当選した当時の安倍晋三氏(写真/時事通信フォト)

 7月8日、午前11時半ごろ、奈良県の大和西大寺駅付近で安倍晋三・元首相が銃で撃たれて亡くなった。政治家としての安倍氏の実績はよく知られているが、ひとりの人間としての実像はあまり知られていない。40年超の政治記者人生を安倍家取材に費やし、『安倍晋三 沈黙の仮面』著者でもある政治ジャーナリスト・野上忠興氏の取材資料を元に、安倍氏が政治への道を歩み始めた瞬間を振り返る──。

 アメリカ留学後、米留学後、安倍氏は神戸製鋼に就職、本社輸出部に配属されて「仕事の喜び」を見出すようになった。そして、1982年、父・晋太郎氏が外務大臣に就任、秘書官になるよう命じられた。だが当時、安倍氏はこれに反発。神戸製鋼を退職することを拒否した。

 元来、晋太郎氏はせっかちだった。外務大臣就任後も政務秘書官不在が続く異例の事態に苛立ちを募らせ、同社首脳部に連日電話を入れては、退職させるよう迫った。収拾に当たった晋太郎氏の秘書は、かつてこう語っていた。

「神戸製鋼の総務部長が『大臣からは矢の催促ですが、本人がウンと言わない限り辞めさせることはできない。社長も副社長も頭を抱えている』と泣きついてきた。会社側は、夜のうちに晋三さんの机を撤去し、朝来ても『出社に及ばず』と通告する強行手段まで検討したそうだ。が、これは不祥事を起こした場合の措置で、労働組合の同意がなければできないという説明だった」

 安倍氏と父・晋太郞氏のにらみ合いは、会社を巻き込んで2週間余り続いた。その頃、成蹊大アーチェリー部時代の友人に、安倍氏は心境を吐露していた。

「親父に秘書官になれと言われて辞めることになったんだが、会社にどう説明したらいいのか困っている」

 友人は「とにかく上司に相談して了解を取ったほうがいい」とアドバイスしたとという。最後に安倍氏を動かしたのは、直属上司の言葉だった。その課長は「ちょっと飯食いに行こう」と安倍氏を食事に誘った。

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン