KDDIの大規模通信障害が起きたことで、携帯通話やスマホのデータ通信だけでなく、生活の様々なものごとが機能しなくなったことに驚かされた。これがもし、電力供給だったらと思うと、その影響はどれほどのものになるのか。ライターの小川裕夫氏が、東京の地下鉄による大規模停電への備えについてレポートする。
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6月末から7月初旬にかけて、35度を上回る猛暑日が続いた。繰り返し熱中症への危険が叫ばれる一方、政府は電力需給が厳しくなっていることを理由に国民に節電を呼びかけた。
特に電力需要の高い首都圏では、あちこちで節電への対応に追われている。工場は稼働していない機械の電源をこまめに切り、コンビニやスーパーといった商店では店内照明を暗くするなどで対応。また、政府は各家庭で電気の無駄遣いを減らしてもらおうと、節電ポイントなる還元策を検討中だ。
節電に協力しても、前述したように熱中症のリスクからエアコンをオフにすることはできない。それと同様に、企業は経済活動を止めるわけにはいかず、その節電にも限界がある。
鉄道会社も電気がなくては企業活動が成り立たない。電車が電気で走ることは言うまでもないが、駅などでも大量の電気を使用している。そのため、電力需要がオーバーして大規模停電が起きれば、鉄道各社は混乱し、事故のリスクは一気に高まる。
とりわけ地下鉄は日が当たらない区間を走っているだけに、大規模停電が起きると乗客は真っ暗な闇へ放り出される。多くの乗客が一斉に暗闇の中に放り出される状況は、危険と言わざるを得ない。
「東京都交通局では、6月25日に新宿線で大規模停電が発生したと仮定した避難訓練を実施しました」と話すのは、東京都交通局総務部広報課の担当者だ。
東京都交通局は、新宿線のほか浅草線・三田線・大江戸線の4路線を運行している。大規模停電が起きた場合、地下鉄に電気は供給されなくなる。当然ながら、停電時に電車を走らせることはできない。そのため、運転士や駅係員が乗客の避難誘導にあたる。しかし、新宿線だけは特殊な事情を抱える。
「新宿線の東大島駅―船堀駅間には、荒川と中川を渡る長大橋梁があります。この橋梁区間を通過中に停電が起きると、電車が橋の上に取り残されてしまいます。これは、乗客にとって危険な状況です。こうした状況になることを避けるため、新宿線には電力貯蔵施設を備えています」(同)