1970年代の若者たちに大きな影響を与えたシンガー・ソングライターの吉田拓郎(76)。ラストアルバム『ah-面白かった』を発表し、このまま一線を退くという。かつての若者は吉田にどういった影響を受け、人生が変わったのだろうか──。
「グループサウンズとか歌謡曲くらいしか聴いていなかったので、強い衝撃を受けました。すっかりファンになり、ギターも買って拓郎さんのコピーばかりしていました。1曲だけを挙げるのは難しいですが、政治家である今の自分の立場から選ぶなら、『知識』ですね」
こう語るのは、衆議院議員の江田憲司氏(66)である。
「アルバム『今はまだ人生を語らず』(1974年)に収録されている曲で知識人を批判するようなフレーズが並ぶ、社会性、メッセージ性の強い曲です。
当時自分は高校生。理屈っぽい人間でしたから、自分を見透かしたような言葉が胸に刺さりました。
自分で言うのも憚られますが、警察官の家庭で育ち、真面目で、人の道に外れず、学歴社会を生きてきた。そんな時に拓郎さんの歌に出会い、拓郎さんの世間に迎合しない無頼派的なスタンスに大きな影響を受けたし、憧れました。
自分には拓郎さんの真似はできない。でも、42歳で官僚を辞めて人生をリセットし、政治家になる決断ができたのも、拓郎さんの歌詞や生き方への憧れがあったからで、彼の歌に背中を押されたのは間違いありません。
政治家になった今も自分は知識人側にいるのでしょうし、“お前ら身分を保証されてリスク取ってないだろう”と言われているように感じます。歌詞に出てきたような知識人になっていないか。人生の転機や何か決断する時には、自分を戒める意味もこめてこの曲を聴き、自分の立ち位置を確認しています」
※週刊ポスト2022年7月22日号