7月8日に安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件は、各国のメディアでも速報が打たれた。特に欧州のメディアが注目したのが、日本の「安全神話」が揺らいだことについてだ。日本という国で起きた今回の事件の意味は、欧州ではどのように理解されているのだろうか――。フランスに滞在する在欧ジャーナリスト・宮下洋一氏がレポートする。
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7月8日時点での欧州メディアの報道は「銃規制が厳しい日本では、極めて稀な事件」との論調でほぼ一致していたが、テレビ報道のなかで日本の現状を的確に分析していたのは、フランスのニュース専門番組「フランスアンフォ」で解説するジャーナリストのフロランス・トマゾ氏だった。彼は、このように述べている。
「銃器は、この島国ではほぼ出回っておらず、銃による死者は、年間10人以下に留まりました。日本は至って平和な国で、暴力に訴えることはなく、暴力を使う人たちは弾圧されます。重大殺人事件の犯人は、時には死刑を言い渡され、昨年12月には3人が処刑されています。また、2007年に長崎で起きた市長射殺事件でも、犯人は無期懲役になりましたが、日本でこのような事件は極めて珍しいことです」
安倍元首相の死に拍手した中国
一夜明けた7月9日には、紙媒体がこぞって「安倍元首相銃撃事件」の記事やオピニオンを掲載した。フランス・フィガロ紙は、「街頭演説中の元首相銃殺事件は、日本と世界を震撼させた」との見出しを掲げた。レジス・アルノー特派員は、日本の安全神話について、次のように書いている。
「この事件は、想像を絶する。殺人者が手製の武器を犯行に使ったということは、日本人にとっては頭が痛い。この社会では、(本物の)銃器が存在しないからだ。(中略)日本の政界は平和だ。政治紛争は、力でなく話し合いで行われる。市民は、西側諸国では当たり前のデモを行なわない」